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マスクを被った二人の男がわけのわけのわけの分からない言葉を叫びながら全力疾走する姿と、その圧倒的な台詞量に鳥肌が立ち、心を打ち抜かれたような衝撃を受けました。嗚呼、世の中には次元の違うゴールを目指している人もいるのだと・・・。監督は小松隆志さん。当時はまだメジャーデビューされてはいませんでしたが(1991年に商業映画デビュー)、小さな8㎜フイルムから溢れ出る才気からは、こういう人がプロの映画監督になっていくんだろうと納得させられたものです。
作者の溢れるプロレス愛がたっぷりと詰まっていて、私にとって「はまる要素」が2つ合った事も幸運でした。小松監督は、その後に第3回PFFスカラシップとして16ミリ作品「バス」㊧を撮り、91年に商業映画デビューを果たします。当時映像以上に心に突き刺さったのがそのタイトル。パンフレットでは日本語のタイトルの英訳もあったのですが、『いそげブライアン』の英訳は『GO GO BRYAN』。懐かしくて資料をネットを探したら、『BRYAN GO GO』となっていましたので、私の記憶違いだったのか・・・。
当時のパンフレットの誤植だったか分かりませんが、私の脳髄には『GO GO BRYAN』と記憶され、その言葉のリズムにも強く感銘を受けました。タイトルや台詞のひと言、ひと文字から浮かび上がるイメージの豊かさ、激しさに涙が出そうになったのです。約1時間ほどの作品ですが、冗長なところが一切無く、走り回り喋り、怒鳴りまくる、その躍動、その怒声、そのエネルギーすべてが、私の胸を激しく揺さぶり、鳥肌ものの映像体験となりました。
あの年代の、あの若さの、ああいう事で頭が一杯の学生だった『私』が観たから感じ取れた空気だったのかもしれません。嗚呼、こういう映画があっていいんだと・・・もともとテクニカルな映像には興味が薄く、シナリオや台詞など『物語』としての映画に惹かれていたのですが、この映画と出会い、言葉で人の心を震わせる事も出来るのだと実感させられた映像体験でした。もしもまた観る事が出来るのならば、もう一度観てみたい魂の大傑作ですが、今観直すと感じるものが随分違うかもしれません。ちなみに小松監督のプロレス愛は、数年のちに、資金難から解散の危機に陥っている弱小女子プロレス団体の悲哀と歓喜を描いた『ワイルドフラワーズ』という映画で結実するのですが、それは和製『カリフォルニア・ドールズ』とも言えるプロレス映画の傑作!信念を貫く渾身の延髄蹴りは、再び私の脳髄を揺らすのです。
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