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今でもときどき読み返したくなるほど大人をも唸らせるドラマツルギーに満ち溢れ、その勢いがペン先からの溢れんばかり!当時人気絶頂だった里中満智子との共作「ウオッス10番」、「ガッツ10番」、「スラッガー10番」の三部作など野心的な取り組みもありました。1993年執筆の『平成野球草子』までほぼすべての作品をリアルタイムで読んだ水島野球漫画ファンとしては、やはり佐々木守と組んだ『男どアホウ甲子園』、『あぶさん』の初期、そして初期の『野球狂の詩』が絶頂だったと思います。
『野球狂の詩』は、後半になると日本プロ野球初の女性選手・水原勇気の登場によって路線が大きく変わっていきます。連載も増えて、一コマに賭ける時間も短くなったようでタッチも粗くなって、内容も過去の焼き直しも目立つようになり、だんだん心が離れていきました。特に最近は、過去の遺産キャラで無理矢理話を作っていて、すっかり人間離れした『あぶさん』や、『ドカベン・プロ野球編』などは正直見るに堪えません。作風や筆致も歳と共に変わっていくのは仕方ない事なのでしょうが・・・。
子どもの頃に受けた衝撃が強かった反動もあるのかもしれません。その『野球狂の詩』の中でもっとも好きだったのが、幼い頃に捨てられて別れ離れになった双子(東京メッツの投手・火浦健と阪神タイガースの主軸・王島大介)が、壮絶で過酷な運命を背負いながらも、それぞれの環境で野球を続け、やがてプロの舞台で対決するという『北の狼・南の虎』。これをベストに挙げる方は多数いらっしゃいますが、私もあまりの感動に子供ながらに涙し、母にもぜひ読んで~と勧めた事を今でも鮮明に覚えています。
当時の水島漫画には巨人の選手が登場することが少なく、セ・リーグであれば阪神タイガースが頻繁に登場していました。中でも大好きだった江夏・田淵の黄金バッテリーは、東京メッツ・ナインに随分と美味しいところを持っていかれる役回りながら出演回数も際立っていました。さてさて、随分遠回りになりましたが、鯨漁師だった海王神人が大洋ホエールズに入り、人間離れしたパワーでプロ野球界を席巻する『モビーゴッド ―鯨神―』という作品が私の中では『北の狼・南の虎』と双璧!それぞれ3話構成の当時としては珍しい長篇となっていました。それだけに読み応えも充分で、今でもときどき読み返したくなるほど大好きな作品です。先日、捕鯨のニュースをネットで見た時に、スタートダッシュで低迷する横浜DeNAベイスターズの記事もちょうど並んでいて、鯨つながりでこの『モビーゴッド』の事を思い出したのでした。
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