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この『太陽公園・白鳥城』にはただただ呆れるばかりでしたが、多くの人が素通りする中で唯一私の足が留まるコーナーがありました。それは白亜の城のかなり上の階だったと思うのですが、「くるみ割り人形」ばかりが展示してあるコーナーです。建物の入口付近にドイツ連邦共和国総領事からのメッセージが石碑に刻まれていたので、ドイツとの関係もあるようで、そのためだと思うのですが、ドイツの伝統的な民芸品である『くるみ割り人形』がズラリと並び、その作業風景も再現されていました。
『くるみ割り人形』といえば、チャイコフスキーが作曲したバレエ音楽として有名ですが、その中に登場するのが木造りのくるみ割り人形です。ドイツではクリスマツツリーの代表的な装飾品でもあるという事で、クリスマスのプレゼントにもなっていたそうです。そのため舞台もクリスマスシーズンに上演されることが多いようですが、ちょっと日本人には馴染みの薄い話ではないでしょうか。私も子供の頃、読んだはずですがどうしても細部が思い出せず改めてストーリーを読み返してみました。
あらすじを紹介すると、クリスマスイブの夜、少女クララの家ではパーティーが開かれていて、そこでクララは人形使いからくるみ割り人形をプレゼントされます。その夜、クララが目覚めると体が小さくなって、ネズミの大群と戦うくるみ割り人形に出会います。その後、くるみ割り人形は素敵な王子に変身し、クララをお菓子の国に連れて行きます。そこではいろいろな踊りが披露され、最後に金平糖の精と王子が踊るのですが、ふと気が付くとクララは自分の部屋で目を覚まします。すべてが夢だったのです。
その後に呪いの解けた王子が現れクララに求婚し、ふたりは幸せに暮らしました・・・というのが大筋です。かなりザックリとしたあらすじですが、話の肝は見た目に不格好で醜いくるみ割り人形をクララが受け入れ、兄が無理矢理硬いクルミを割らせて壊れた体に包帯を巻いて看病してあげるというところでしょう。くるみ割り人形という存在を知らない今どきの子供たちからすると、クルミを割るだけの実用的なキッチン用品に恋をしてしまった夢見る少女の物語という事になるのかもしれません。
このくるみ割り人形の起源は、ドイツ ザクセン州のザイフェン村で15世紀頃に作られたもので、兵士や騎士、王様の格好をしたものが多いのは、権威をふりかざす彼らの口を硬いクルミで塞いでしまおうという村人たちのささやかな抵抗、憂さ晴らしから生まれたものによるということです。日本でも硬いクルミの殻の凹凸は、醜い鬼に例えられていますが(オニグルミ)、ドイツにおいても尋常ではない殻の硬さは「権力への抗う象徴」とみなされているのは何だか気の毒に思えてしまうのです。
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