森のかけら | 大五木材


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チークについては本当に終わらせるつもりでしたが、11日も書いているとどうしても補足してしておきたい事が次から次から浮かんできて、掟破りの余話の余話をもう1日にだけ追加させていただきます。今から3年前の2011年の9月にこのブログにアップした話でしたが、TBS系列で放送いていた『飛び出せ!科学くん』という実験科学番組について少しだけ触れさせていただいて、本当の本当にこれで『長い長いチークの話』の締めとさせていただきます。

詳しくはブログ内で検索いただきたいのですが、その番組内で番組MC田中直樹氏が、日本の誇る最新鋭の深海左遷調査船「ハイパードルフィン」に乗り込んで、世界一深いとも言われる駿河湾の深海でまだ見ぬ深海魚を探すというプロジェクトで、偶然駿河湾に沈んだといわれるロシアの軍艦・ディアナ号ではないかと思われる不自然な木の塊を見つけてしまうのです。そこで、その木片を引き揚げてみてディアナ号かどうかを調査するというもので、何とその依頼らしきものが・・・

その木片の鑑定がたまたま私のところに回ってきたのですが・・・!?その経緯についても過去のブログで詳しく書いておりますが、あまりに突然でほとんど説明もないご依頼でありましたし、『鑑定』という責任の重圧もあり、結局おお断りさせていただきました。鑑定は出来ずとも、150年前に沈んだかもしれない木の木片が、海中でどのような経年変化を遂げていたのか見るだけでも見たかったなあと・・・。結局二度にわたる探索でもディアナ号を見つける事は出来ませんでした。

自然界において動植物の腐敗や分解は、微生物の力に拠るところが多いのですが、充分な光や酸素の無い深海などでは、分解できる微生物の数も少なく、その活動も抑制され、紫外線や温度などの外因の影響もあって腐りにくいので、通常の水中での腐食とはわけが違うとわけです。それでも150年経たチークの表面がどうなっているのか?またそれをひと削りすればまた元の輝きを見せてくれるのか?チークの事を書いていて、またその事を思い出し悔しさが込みあげてきたのです。

チークは耐久性があるとか収縮にも強いといつも説明しているものの、深海という過酷な環境で150年も経過すると実際にはどうなるのか(ディアナ号のものという前提の話ですが)、最強銘木のチークの『世紀越え』の勇姿を見て見たかった・・・。さすがに船の甲板という形でチークと接する機会は稀で(あくまでも私の周辺では)、主にフローリングや造作、カウンターが主な出会いですが、それらが100年後にどうのようになっているか、その姿にも思いを馳せてみるのです。




チークの項は昨日で終わりにするつもりでしたが、まだもう少し書き足したい事を思いついたので、1日だけ余談の追加です。東南アジアあたりでよく丸太を鼻で抱えて運んでいる象の映像を見る事がありますが、数こそ減ったものの今でもタイでは象が木を運んでいるそうです。そもそもは、今から100数年前に、タイの北部一帯の広大なチーク林の伐採権を得たイギリスの企業が、重たいチークを運ぶために象に運ばせるようになったのがことの起こりだと言われています

まだ小象の頃から訓練を始め、木材を運ぶ動作や林業機械の騒音などに驚かないように訓練を受けるそうですが、丸太の運搬だけではなく観光客向けのショーなどにも出演して、タイの外貨獲得にひと役買っているそうです。ところが1988年にタイ南部を甚大な集中豪雨が襲い、いくつかの村で壊滅的な被害が出、300名を超える大災害が発生したことで、政府の木材輸出政策は大きく方向転換。上流の森林破壊が原因と考えたタイ政府は、全国的な森林伐採禁止令を公布したのです

その結果、丸太を運んでいた多くの象はショーなどに転職したり、職を失う事態となってしまったようです。現在、チークの伐採は厳格に管理されているそうですが、それでも違法伐採は後を絶たず、象に過酷な労働を強いたりするなど、摘発と違法伐採のいたちごっこは続いているのだとか。何も知らない象が犯罪の片棒を担がされるというのは悲しい話です。象による木材運搬って南国情緒を想起させるものの、現地には現地の深刻な事情もあるので決して甘い幻想ではありません。

残念ながら私はタイに行ったことがないのですが、父親は何度か行っていて、そういえば自宅にチーク造りの象の置物がありました。本当は、取り扱っている木の生まれたすべての国に行って、その木が育った森や環境、歴史的な背景までも理解したうえで、木を販売できればベストなのですが、現実的には難しい事もあり、輸入商社の方やバイヤーの人から間接的に聴くというレベルに留まっていて情けないのですが、きっといつの日にか世界の森を巡りたいと思っています。




およそ10年ぶりにチークについて書いたので、思いのほか筆が進んだこともあって、すっかり大長編になってしまいましたが、本日はチーク篇の最後です。チークの特徴、性質には今までいろいろ書いてきましたが、その色合いを言葉で説明するのは非常に難しいです。産地によっても微妙に違いますし、経年変化でも随分変わってきます。チークの小口を切ると断面は黄金していることに驚きを覚える人もいると思います。それが時間が経つとあれよあれよという間に変色していきます。

空気に触れる事であっという間に色が変わる事はよく知られていますが。ゴールデンブラウン色から、空気に触れてリッチブラウン色に変わるものが最高とされ、造船などに利用されるそうです。そんなチークですが加工現場では意外にも歓迎されないのです。加工性そのものは決して悪くないのですが、材中に石灰質の成分(シリカ)を含んでいるため(表面に白い帯状に現れる)、加工機にかけたり、鉋で削ると一瞬で刃先を磨滅して刃物が使えなくなってしまうのです。

また油分が非常に多いため、サンダーで磨いてもあっという間にサンダーが目詰まりしてしまいますので、チークを加工する際は予備の刃先やらサンドペーパーの交換を頻繁に行う必要があって、加工する立場からすると決して歓迎されないのですが、それを差し引いてもやっぱりチークは素晴らしい~!倉庫の中にストックしているチークの板を動かす時に、ぐっと肩を入れるためチークに近づくと独特の匂いがします。20数年経ったチークからも色気ある香りが漂ってきます。

チーク、マホガニー、ブラック・ウォールナットが『世界三大銘木』であるとご紹介しましたが、これは私の見解ではなく世界の評価。その中で私は正直、マホガニーだけは今ひとつ良さが分かりかねる部分があるのですが(そこまでの評価を得られる理由が)チークとブラック・ウォールナットについては強く同調します。延べ11日にわたるこのチークの話で、ひとりでもチークという木に興味を持つ人が増えたとしたら、材木屋として至上の喜びであります。これにてチーク篇、完結!




弊社で在庫している一番大きなサイズにチークがこちら。サイズは、長さ2500×幅1100×厚み40mmのかなり大きなもの。入手してからもう10数年が経過しました。もともと複数枚あったのですが、これ以外はすべて売れてしまいました。多少端にクラックや節もあり、芯も少し絡んでいますが、このままで大きなダイニングテーブルになるサイズです。いくら希少になったチークといえども、全国の名だたる材木屋、銘木屋に行けば、こんなもの比べ物にならない巨大で雅趣に溢れた立派なチークはまだまだいくらでも残っていることでしょう。それに比べればこのチークなんて少し大きなぐらいで、特別際立ったものではないでしょう。銘木屋恐るべしです!それでも私にとってはご縁があって偶然手に入った想い出深い大切なビッグチークです。

それでも私は、チェンソーの跡のついたこのチークの板が大好きです。木に惚れ込みすぎては商売になりませんが、後先考えるときっとこれぐらいのサイズのチークの1枚板は、弊社では二度と仕入できないかもしれません。モノがあったとしても、いつ売れるやも分からない木に高いお金を出して何年も寝かせておく余裕は、これからは正直ありません。出口が見える材、出口を作れる自信のある材ならば、いくら寝かせても不安はありませんが、やはりチークは別格なのです。

チークはいわば大トロです。どんな問屋が扱おうと、どんな料理人が手掛けようと、元ネタがいいので美味しくなるのは当然なのです。つまり偏屈材木屋としては、出番のない、関わり甲斐の薄い材なのです。ですから本来立派なチークは、相応の材木屋の名店にあってしかるべきなのかもしれませんが、ご縁があって弊社に来てくれたチークに余計に愛おしさを感じてしまうのです。出来る事ならこのご縁、ずっと手放したくないなんて・・・それでは商売人失格でございます。

売りたいような売りたくないようなチークですが、現在チークの注文材(工場で規格化されたフローリングなどではなく、注文に応じて製材してもらうもの)は、1平方メートル100万円以下では手に入らないのは常識で、他の材と比べると相当に高価です。ただし萬福寺などのように、チークで大きな柱や桁を取るのでなく、意匠的にワンポイントで使う程度であれば、1本単価に換算すれば仰天するほどに高額になるわけではないので、過度にチークを敬遠なされますように。




チークが普及し始めると、チークに非ざる「OOチーク」といったまがいものの格安品が出回ったりするのか困りものであります。それほどチークという名前が、高級材、高品質の代名詞のようになっている人気ゆえの証拠でもあるのですが、全然品質の劣るものがチークと称して出回り、そのことで誰かが不幸な目に遭っては気の毒です。それでよく誤解されるのが、タイランドチーク、ジャワチーク、ネシアチークなど産地を冠した銘柄読みとは違いますのでお気をつけください

例えばアフリカンチーク(イロコとかユーラシアンチーク(ぺリコプシスなどがその例ですが、全く別の種類の木にチークの名前を冠するのは問題だし、イロコやぺリコプシスにとっても迷惑な話です。もとの名前が一般的に浸透してないがための手段でしょうが、それは市場の混乱を招くだけですし、認知度の低い木だからこそ自分が積極的に押して広めていこうという気概が必要なのではないでしょうか。他人の褌で相撲をとるような考え方は厳に慎むべきだと思うのです。

弊社には現在、20年以上天然乾燥させたミャンマーのチークの耳付き板が10数枚あります。ここで乾かしたのではなく、ずっとお宝として持っていた材木店が閉店するというので買い取らせていただいたものですが、最近流通してるチークに比べると、色あいといい艶っ気といい比べ物にならない上質さ。耳付き材で、白太部分は虫害を受けたものやクラックの入ったものもありますが、今やなかなかと手に入らないレア物。少しずつ大切に販売させていただいております。

カウンターなど必要寸法を木取りして残った端材も、当然【森のかけら】や『モザイクボード』に使い、文字通り骨まで利用させていただいております。チークの気乾比重は0.68という事なので、ホワイトオークと同等ということになりますが、体感としてはチークの方が随分軽く感じます。高価な材ゆえ、それほど大量に端材も出るわけではないのですが、モザイクボードなどでチークを見つけたら幸運です。しかしあれだけ多彩の色調の中では地味に見えてしまうかもしれませんが・・・




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