森のかけら | 大五木材


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LLP-SAL 空間芸術研究所』の大阪オフィスには、パートリッジウッドの他にもいくつかの木を使っていただいたのですが、その中に恐らく弊社史上最大サイズの幅剥ぎテーブルがあり、それがこちらのブラック・チェリーの幅剥ぎの巨大テーブル。サイズは2800×1500×30㎜。あまりの幅ゆえに8枚も幅を剥ぎ合わせねばならないほど。右写真の手前がパートリッジウッド、こちらも2850×900㎜のビッグサイズゆえに、奥のブラック・チェリーの大きさが今ひとつ分かりにくいかもしれませんが、同時期にこれだけのサイズが並ぶなんて事は初めて。

あまりの大きさゆえ、いつも塗装している場所にまでは運び込めず、急遽倉庫の正面を使って塗装作業。開いててよかった~。納品までの数日間、お客さんが来られるたびに、それまで掛けていた毛布をめくって、「おお~っ!」という驚きに満ちた声を聞くのが癖になっていました。家具材を求めて来られたわけでもない方にもサービスお披露目(笑)。大きな事が必ずしも優れている要件ではありませんし、巨大一枚板というわけでもありませんが、存在感という点では圧倒的!大きいという事はそれだけで価値があるのは間違いない。

ブラック・チェリーは、ブラック・ウォールナット、ハードメープル、ホワイトオーク、レッドオーク、イエローポプラ、ホワイトアッシュとともに北米を代表する広葉樹で、色味が赤くて光沢があり、かつやわらかい雰囲気があることから女性の方に人気があります。右の写真の中央部の黒い線に見えるのは、反り止めの金物ですが、それを挟んだ左右の板は木目を見ればお分かりの通り同材です。それがオイルを塗るだけでこれほど変わってきます。勿論オイルは植物性のクリアーで着色はしておりません。これがブラック・チェリー本来の色です。

仕上がったのがこちら。写真に撮ると光の反射で、塗装ムラがあるように映りますが実際に見ると写真のようなムラは感じません。実に塗装映えのする木だと思います。ただしこの時期、注意しないといけないのはブラック・チェリーはすぐに日焼けしてしまうので、保管したり配達するときに極力日にあてない事が大事。中途半端な養生とかしていると、養生しきれなかった部分にクッキリと日焼けの跡が残ります。これぐらいならいいだろうと思うような短時間でも夏の日差しはブラック・チェリーにはご法度。

 




こちらが全面に塗装を施して仕上がってパートリッジウッドあるいは、アンゲリンまたはダリナの完成した状態。アップで見るとあれほど緻密でのこうな杢がややかすんで見えてしまいますが、どっしりした重量感とくどすぎない上品さがあります。今までこの木の端材や小さなモノとしてしか販売したことがなかったので、なかなかご紹介も出来ませんでしたがようやく念願が叶いました。この後、この天板は大阪まで運ばれて現地でアイアンのフレームと鉄脚が取り付けられてテーブルとなりました。

まだ現地に行って完成した雄姿を見れていないので、いつか訪ねさせていただくつもりですが、今回このパートリッジウッドのテーブルに決めていただいたのは、今年の4月に立ち上がった『LLP-SAL 空間芸術研究所』さん。いつもお世話になっている松山市の㈱グローブコンペティションの代表の山田徹さんと、高木智悌さん、城野康信のさんの才人3人が集結して新たに立ち上げた組織です。大阪・京都、東京、松山の3拠点で本格的な活動を展開されるために、まずは大阪の拠点となるオフィス建設にあたり、この材を選んでいただきました。

私はまだ山田さんしか存じ上げませんが、こういう木を選ばれるということからも組織の柔軟性が感じられます。今後いろいろとおとなのあそび心に溢れた仕事をされていくと思うので、非常に楽しみである反面、そういう人たちを納得させられるような『個性的な木、変わった木、癖の強い木、到底常人では使いこなせそうにない木』などを仕入れて来ないといけないぞというプレッシャーもあります。もう普通の仕事には戻っていけそうになくなるつつありますが、そういう人間たちもいないと、マイナーの木の出口がなくなってしまいます。

そういう人たちって木選びも非常にアグレッシブで怖いもの知らず、いや何かあっても受け止める寛容さと乗り切れるだけの知見があるので、こちらの選択肢の幅も広がります。実際このパートリッジウッドをテーブルにしたのは今回初めてですが、こうして誰かが足を踏み出さないと新しい材の出口は生まれません。これで私も自信を持ってこの木を今後お勧めできますし、用途も広げていけそうです。あくまで私の感覚ですが、触感はニヤトーのような蝋のようなヌルッとした冷たい感覚です

こういうあまり知られていないマイナーな木って、知られていないなりの理由があります。物理的には供給量の問題や流通システムの問題の他に、材の性質の問題もあります。例えば乾燥すると極端にねじれるとか、後から後からダラダラとヤニが出るとか、虫が潜んでいて後から虫が出てくるとか。利用頻度が少なすぎてどういう特徴があるのかよく分かりませんが、こういう木こそ寛容で勇気ある大人の方に、従来とは違う物差しで、違う価値観で見定めていただきたい。木の多様性って、作る側にではなく使う側にこそあると思うのです

 




ウズラ卵業界。食文化に欠かせない卵という分野でありながらも、ウズラという嗜好性の高いマニアックな存在ゆえに、景気が悪くなると原料費の高騰や後継者問題で業界が疲弊して業者数が激減するという流れは、まさに銘木業界のそれと同じ。なのでとても他人事とは思えずつい感情的になって大きく脱線してしまったのですが、無くなっても困りはしなけれど、あればいろどりとしてはいいよね~的な存在としては銘木業界も共通。分野は違えどもマニアックなファンを育てて市場を確立させていかなければならないという点では一致しています

ウズラの卵生産日本一の会社では、今までウズラの卵を使っていなかった飲食店にウズラの卵を使った料理の提案をしたり、卵の回収の自動化などに取り組むまれたりもしている様子。一方、小学校などへの出前授業による啓蒙活動は人材不足などもありなかなか進んでいないみたいで、そういう事情も含めて一層シンパシーを感じます。実は豊橋市の周辺には木材の取引先がいくつかあって、よく通過していましたが、今度は豊橋にも寄ってウズラの卵関連の商品を購入したいと思っています。がんばれ豊橋!がんばれウズラの卵!

という事で、ここから改めてパートリッジウッド』こと『アンゲリン』、あるいは『ダリナの話です。弊社でも取り扱い経験がなかったので、最初は小さくカットして端材を削ったり加工したししてみておそるおそる使ってみました。マメ科の木らしく硬質で、削ると滑らか。木目はウズラの羽に例えられるのも納得がいく美しさ。オイルを塗ると更に濡れ色になって光沢が増します。木目があまりに緻密すぎて、少し離れてしまうと濃い目の赤身の中に埋没して木理が分からなくなってしまうほど。右の写真はオイル塗装を施した状態のもの。

塗装する前はかなり地味な色合い。今回アンゲリンで作らせていただいたのは、2850×900×40㎜サイズのテーブル。幅が広いので裏面には反り止めの金物を座彫りして入れています。左の写真はオイル塗装工程の途中ですが、写真の奥はオイルを塗ったので濡れ色になって濃いオレンジ色になっていますが着色しているわけではありません。幅広なので3枚の板を幅剥ぎにしていますが、片面に黒い筋があったので、そちらを裏面にして使わせていただきました。さすがにこのサイズになると一人でひっくり返すのは無理。明日に続く・・・

 




という事で昨日からの話を受けて、鳥の名前を持つ木、『パートリッジウッドPartridge wood』の話です。パートリッジとはヤマウズラ(山鶉)の事で、由来はその羽の模様を杢に見立てたものだと思われます。ケイトウ(鶏頭)ヒヨドリバナ(鵯花)、サギソウ(鷺草)など鳥の名前が冠せられた草花は結構多いのですが、鳥の名前が付く和名の木というと、カラスザンショウ(烏山椒)ぐらいしか思い浮かびませんでした。俗名や地方での方言名まで探せば個性的なものが見つかりそうではありますが。

樹木ではありませんが、ミヤマウズラ(深山鶉)という花があって、名前の由来はやはりその葉の斑紋がウズラの羽の模様に似ているためだそうです。しかしその印象はパートリッジウッドのそれとは随分違います。それで、よくあるパターンなのですが、同じ生物を示していても日本と海外では全然見た目や雰囲気が違うという事があるので、一応イギリスのヤマウズラで検索してみると・・・ウズラにもいろいろな種類がいるみたいで、これはあまりぬかるみにはまると『今日のかけら』が『今日の鳥』になってしまいそうなのでこのあたりで止めておきます。

いずれにしろウズラの羽が鮮やかで野趣溢れた美しさを持っているという感覚は洋の東西を問わないということは分かりました。蛇足ながらウズラといえば、私は蕎麦屋でザルソバ一緒に出てくる小さな卵を思い浮かべるのですが、最近蕎麦屋でそのウズラの卵を見かけなくなりました。あの小さな卵がうまく割れなくて殻がツユに入ったりして面倒だったのですが、無くなると妙に寂しい。それでちょっと気になって調べてみたら、ざるそばにウズラの卵がつくのは関西の文化らしく、関東ではつかないとの事。知りませんでした💦

なぜザルソバにウズラの卵がつかなくなったかというと、その生産農家が激減しているという話があるようです。これも調べて初めて知ったのですが、ウズラ卵の全国のシェアの約70%を占めているのが愛知県で、更にその85%を占めているのが豊橋市。かつて60件もあったその豊橋のウズラ農家が7戸にまで激減。飼料価格や物流費が高騰して経営を圧迫。ウズラは小さな体で卵を産むため、高タンパク高カロリーの高価な飼料が必要という事で、原料費の高騰は死活問題なのだそうです。更に後継者問題等もあり環境はかなり厳しいとのこと。

普通の卵に比べるとウズラの卵は嗜好性が強いので、高くなると途端に入れなくなるので価格転嫁が思うように進まないという事、小さな農家では大きな食品加工会社に対する交渉力が無い、供給不足が発生したとしても海外から安価な輸入卵が入って来て価格競争に勝てないなどなど、とても他人事とは思えません。それらの背景もあって蕎麦屋ではウズラの卵を出さなくなってしまったのかも。これは見捨ててはおけない。蕎麦屋が出さぬなら我が家ではウズラの卵を使おう!木も一緒だけどマニアックな嗜好性を育てるって大事。

 




木と虫」の話で書き足りなかった事をもう少し。先住者である虫に申し訳ないという思いを馳せながらも、現実には非常に残酷で非道な「強制退去」してもらっているわけで、いくら言葉を操ってもやっていることは言い訳の出来ない鬼の所業です。そこからは鬼側の論点ですが、住居から叩き出された虫たちはやがて力尽きて死んでしまう。ならばこいつらも無駄死にするよりは役に立つ方がよかろう(あくまで鬼視点💦)と、鳥たちの目につきやすそうな所に移動させておきます。それを見つけた鳥たちは虫を加えて巣へと運んでいくのです。これぞ命の循環

もうそれならいっそうのこと、うちの土場にキツツキ(啄木鳥)がやって来て、中に虫が潜んでいそうな樹皮の分厚い耳付きの木を探して、木をつついて中の虫を捕まくれないかしら(あ、言っちゃった💦)と思ったりもします。まあとにかく人間はじめ木に命を委ねている生き物は多くいますので、それなりの覚悟を持って付き合わねばならないという事です。さて話は変わりますが、3年前に『適材適所』に木と鳥の話を書いた時には、まだ実例がなくて書けなかった「鳥の名前を持つ木」がありますが、それがこちらの中南米産のマメ科の広葉樹『アンゲリン』です。

『アンゲリン』については、数年前にブログでも取り上げましたが、市場では『ダリナ』という名前で流通していて、自分でいろいろ調べてアンゲリンに辿り着きました。しかし誰かのお墨付きをもらったわけではないので間違っているのかもしれませんが、特徴は合致しているように思います。合ってるという前提で話すならば、この木はイギリスでは、Partridge wood(パートリッジ・ウッド)と呼ばれています。パートリッジとはヤマウズラ(山鶉)のこと。、私の推測だと名前の由来は鶉の複雑で美しい羽に似た木目からきているのではなかろうかと考えています。

荒材の時にはよく分かりませんでしたが、削ってオイルを塗ってやるとまさにウズラの羽のような雅趣溢れた木目が顔を現わします。世界中のいろいろな木が見たい、触りたい、知りたい私はことあるごとにニューフェイスの木を仕入れてきますが、愛媛の人は保守的な人が多くて、実例の少ない木や新しい材には進んで手を出したりしません。しかし、偏屈、変態性を売りにすること10数年、ようやく周辺の同類の嗜好を持つ方々がお集まりいただくようになり、キワモノや初物が歓迎され受け入れていただくようになってきました!変態性の循環。社会は多様な人間で出来ている

 




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