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尋常でないほどのスピードで成長する『メタセコイア』ですが、さすがにそこまで成長が早いと、材質も恐ろしく柔らかいので、用材としては好まれないという現実があります。近年になって発見された『生きている化石』という背景や、今後も公園木、街路樹、校庭木などの剪定や伐採により原料の安定的な供給も見込まれるなど、美味しい条件がそろっているにも関わらず未だ出口が見えていないというのは実にモッタイナイ話。そう思って私もいろいろ加工してみたものの、さすがにここまで軟らかく、かつ木目の妙味も少ないとなるとなかなか・・・
そういう事情もあって、メタセコイアの材が市場で取引される事はほとんどありません。私はどうしても【森のかけら】の1樹種として採用したかったので、たまたまメタセコイアの挽き板を持っていた製材所に無理を言って分けていただきました。お陰で【森のかけら】に無事加える事が出来たものの、その時に6、7枚の耳付き板を仕入れたのですが、残った板が未だに買い手がつかず。長さ2m、幅500〜600mm、厚み55〜60mm程度の両耳付きの板なのですが、先日書いたように見た目はスギなのでほとんど目立つこともありません。
サイズ的にはテーブルやカウンターにもってこいなのですが、いかんせん木目の妙味がほとんど期待できないのと、材質の軽軟さから敬遠されてしまっています。大きなモノが難しければ、小物というの手もあるのですが、年輪幅が大き過ぎて小さくすればするほど『木らしさ』が失われてしまうため、『森のたまご』や『森のこだま』にしてみてもスギとの個性が分かりにくいのです。しかし見た目の雰囲気が似たようなのはスギとメタセコイアばかりではありませんので、あまりそこに執着する必要はないのだと思うのですが、そこが偏屈材木屋のこだわり。
今回分けていただいたメタセコイアの原木は、在庫している耳付き板に比べると径級も小さい分、木目が密なので少しだけ期待できそうなのです。いつも言っているように『木は決して人間のために生まれてきたわけではない』のですから、木目の粗い細かいに関わらず、ご縁があって手元にやって来たメタセコイアに、活躍できる第二のステージを用意するのも私の務めだと思っております。ちなみにメタセコイアは、松山のお隣の伊予市の市木でもあります。尚更なんとか愛媛県産のメタセコイアらしい出口を考えてみたいものです。
本日も『メタセコイア』の話の続きです。日本に渡来後、全国の街路樹、公園、学校などに沢山植えられたメタセコイアはその後すくすくと成長していきます。なにしろ20年~25年もすると樹高は20m、胸高直径でも500㎜を越えるような巨木になるぐらい成長スピードの速い木らしいので、公園や学校などで見かけるメタセコイアも大きなものは珍しくはありません。愛媛県内にも多くのメタセコイアが植えられています。【森のかけら】に使っているのは岐阜で伐採されたものの端材から作られていますので、外来樹であるにも関わらず産地は国産表記とさせていただいています。
【森のかけら】の産地表記については、学術的な意味の原産地ではなく、その材が生えていたところ、その材の出処という意味で現わしていますので、メタセコイアでもその材が採れた岐阜の産地をつけています。メタセコイアって外国の木じゃないの?と樹種名と産地名で違和感を覚える方もいるかもしれませんがそういう事です。世界の樹種については、その材が生えていた国名で現わしています。あくまでも材木屋のオヤジが作った『モッタイナイ標本』であって、学術的標本ではありませんのでそのあたりはご了承ください。
メタセコイアの木はよく目にしていたものの、大きな木ばかりで枝まで手が届く事もなかったのでその葉を触った事もなかったのですが、今回伐採した幹や枝には葉がついていて、触ってみたのですが非常に柔らかでした。この木は落葉針葉樹で秋になると鮮やかに黄葉して落葉します。柔らかいのは葉っぱだけではありません。成長が早いというだけあって年輪幅は広く材質は極めて柔らか。今までにも結構大きなメタセコイアの材を扱わらせていただきましたが、持ち上げてみてあまりの軽さに「?」と感じる事もしばしば。
この木ほど見た目の期待を裏切る木も少ないのではないのでしょうか。とはいえ、さすがに伐採直後は結構な重さはありましたが、それでも他の木に比べれば遥かに軽い木です。短時間でよく乾燥するものの、その軽軟さゆえにメタセコイアは未だに決定的な用途の定まらない木でもあるのです。板に挽いてしまうと印象は、かなり目の粗いスギといったところで、ほとんど特色の出ない木でもあり、大木が多い割にその活用が進んでいないというのが実情。一辺35㎜角の【森のかけら】などにすると、その中に年輪が1本しか含まれないなんて事もあるほど!
成長が早いという事の裏付けとして、植えて3年もすると高さは2.5mを越え、早いものになると4年で5mに達するという事ですが、ずっとそのペースで成長するというわけではなく、ある程度大きくなれば生長の速度は落ちて今度は太ってくるそうです。アメリカにおけるメタセコイアの研究者・ニーチェ博士によると、理論上は200年から300年もすると、高さが50mにも達するという事だそうです。にわかには信じがたい話ですが、この年齢の粗さ(成長スピード)を見てしまうと、その話もまんざらでもないように思えてくるのです。続く・・・
先日、市内某所で伐採された『メタセコイア』の幹と枝を幾つか分けていただきました。よく混同されがちですが、メタセコイアは『世界一高い木』ではありません。アメリカのセコイア国立公園にあって、世界で一番高い木の一族と呼ばれているのは『セコイア』であって、『メタセコイア』ではありません。高い木のランキングの上位を独占する『セコイア』は商取引では『レッドウッド』とも呼ばれています。ちなみに現在世界で一番高いとされているセコイアは高さ115.61mの巨人・ビッグツリーです。 |
およそ1年ほど前に『愛媛県産のカラマツ』の事について触れましたが、あれから自然乾燥させることおよそ1年、まだ家具などに使うには時期尚早ですが途中経過確認のために、その中から1枚をランダムに取り出して削ってみました。大きめの桟を入れて風通しのよい屋根のある日陰で、重しを乗せながら圧締させて乾かしてきましたので、見た目に極端な歪みや暴れは見受けられません。全量検品したわけではありまませんが、心配していた大きな割れもほとんど入っていないようで安堵しました。しかしまだ乾燥工程の途中段階ですから油断はなりません。
適当なサイズのカラマツを抜き出してみましたが、体感重量はまだまだ道の途中と思われます。ただしカラマツは結構個体差がある木で、ものの本によればカラマツの気乾比重は0.52~0.91で、平均値でも0.68とかなりばらつきがあります。更に私自身、カラマツに関しては充分に乾燥の進んだフローリングやパネリングでの取り扱い経験しかないため、1年間天然乾燥させた体感重量がどれぐらいのものなのか判断する経験則がありません。今回のカラマツの天然乾燥作業は、自分自身にとって取り扱い量の少ない木のデータ収集でもあります。
とりあえず表面をプレ―ナー加工して、次にベルトサンダーで削ってみました。大きな割れはありませんでしたが、削ってよく観察してみると、まるで髪の毛のように細い小割れ(俗にヘアークラックと呼ばれるもの)が幾つか見受けられました。それでも全体的に節の少ないカラマツでしたので、充分に家具や内装材に使えるクオリティです。更に植物性オイルを塗って仕上がりの色合いを確認。オイルが染み込んで、マツ独特の飴色が一層深みを帯びて美しい姿が現われてきました。この色合いもカラマツの醍醐味のひとつであります。
オイルを塗ったからといってすぐに使うわけではなく、これから乾燥が進んで実際に使うようになった頃に、塗装したカラマツが経年変化でどのように変化していくかを見るためのサンプルです。予定ではあと1年から2年ほどじっくりと寝かせてから、徐々に住宅現場や家具材としてご提案させていただこうと思っています。今のところ割れと共に心配していたカラマツの宿命、『脂(ヤニ)』も見受けられません。まだまだ先は長いのですが、想像以上に途中状態がよかったのでひと安心。愛媛産カラマツの出口商品のイメージを膨らませねばなりません!
今から10年ほど前、愛媛木材青年協議会(愛媛木青協)において私たちの世代が中心的な会の運営に携わらせていただく時代がしばらく続きました。それは私の年齢の上下1、2歳幅の間に松末繁治、實田貴史、岡慎治、井上剛、日野猛仁、井部健太郎、井部勇治、渡部康彦と同世代がたまたま集中していて、しかもそれが皆酒好きで気の合う連中ばかりであったという事もあり、ほぼ共有する価値観のもと、これらのメンバーがバトンを受け継ぐように、会長となり、出向者となり、およそ10年近くにわたり深く愛媛木青協の舵取り役の任を負ってきました。
そんな男たちはまじめに会の運営をする一方で、他地域の同じ価値観、同じ感度を持つ人間との交流にも熱心で、中でも我々が注目したのが安東真吾そのひと!安東さんは私たちより少し遅れて美作木青に入会されてきたのですが、その時から我々のリーダー・松末繁治が独特の嗅覚で目をつけて接触。頭脳明晰で広い視野と見識を持つ一方で、子どものように負けず嫌いでわがままな寂しがりだと見抜かれた安東さんは、本人の望む望まずに関わらず、どこまでも執拗に獲物をつけ狙うオオカミのように我々につきまとわれることになったのです。
安東さんは日本の木材業界を代表する銘建工業の人間ですが、我々が興味があるのは『銘建の安東』ではなく、あくまでも負けず嫌いで寂しがりで涙もろくなってきた安東真吾という個人。そうでなければこういう交流は絶対に長続きしません。地元の美作でも盛大に卒業祝いが開催されたそうですが、かなり若返った美作木青では安東さんと同世代の会員は少ないようで、懐かしい木青協の昔話に花を咲かせましょうと、愛媛でも卒業会を開かせていただいた次第。結局何かにかこつけて楽しく飲みたいというだけなのですが・・・
わざわざ旧知の仲の香川からも樋口哲也大先輩も駆けつけていただき、飽きるほど見慣れた連中に囲まれながら、いつものように昔のとんでもなく楽しく懐かしい話に花が咲いたのでした。同じ木材業とはいえ、それぞれ互いに取り扱い品種が違っていたり業態が違っているので、実際の商売上の付き合いがあるというのは少ないのですが、むしろだからこそこうして今も付き合いが出来るのかもしれません。いつの日か我々も第一線を退く日が来るでしょうが、仕事上の付き合いを越えてこうしていつまでも集まれる仲間でいたいものです。
地元の指針となる先輩たちが次々と卒業していく中、他会団ながら安東真吾という人がいたからこそ愛媛木青において、自分を奮起させ目標を持ち続ける事が出来ました。しかし思い出を振り返ってばかりもいられません。あの頃の木青協の昔話の賞味期限が長いのも、夢中になって全力を傾注していたからこそ。更に10年後に、今の時代を上質の酒の肴にして友と飲めるためにも、日々を精一杯生きねばと思うのです。安東さん、それでは人生劇場『第一幕・出会いと木青協』終了。第二幕でもお付き合いよろしくお願いいたします~!
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