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最近飛行機を利用することが多くて松山空港に行くと目に飛び込んでくるのが、空港内のロビーに置かれた木のベンチ。『媛ひのき』と記されたように、愛媛県木材協会が愛媛県産材『媛ひのき』を使用して製作したものです。そこに座られている人のどれぐらいの人がそれが愛媛県産材のヒノキを使って作られたベンチなのかということを意識しているのか分かりませんが、木のモノが入るだけで無機質だった空港ロビーが随分と和らいだ雰囲気になっているように思えます。
これも一般の方に直接PRするためのひとつの『森の出口』だと思いますが、公共施設などで木を使う場合にはいろいろと使用制限や仕上げ規制があったりするので、なんでもかんでも木で作れるというわけにはいかない事もあるでしょうが、頭で考えるばかりでは何も進みません。木だとすぐに経年変化や劣化してしまって汚くなったり、メンテナンス費用がかかるので公共の場などで木を使うのは止めたほうがいいという否定派の方もいますがとても空しい主張に聞こえます。
時間が経っても何も変わらないようなモノに愛着が湧くでしょうか。このヒノキのベンチもやがて時が経てば、黒ずみ、傷がつき、汚れも目立つようになるでしょう。それとて、そのベンチでどれだけ多くの方が腰をかけたかという証拠。それが木を使う意味であり、木であることの喜びだとも思うのです。この場に木がある事でどれだけのPRが出来たのか、どれだけ啓蒙活動が出来たのかという無粋な事を言うお方もいらっしゃるでしょうが、今日蒔いた種を明日刈り取るつもり?。
偏屈材木屋としては、ヒノキ・スギといった『メジャー選手』ばかりにスポットライトが当たると嫉妬してしまうのですが、それはさて置いたとしても、暮らしの中に少しずつでも『木のモノ』が取り入れられ、復権されていくことは嬉しい限りです。若い世代にとっては郷愁としてではなく、新鮮に映る木のモノ。今ほど、木のモノが川下でウェルカムな時代はないのではないかとさえ思えるのです。急いで出口をこじあけていかねば・・・来年は新たな出口5本ぐらいは開通させたい。
今年新設された「第1回ウッドデザイン賞2015(新・木づかい顕彰)」において、「森のかけら」が「ハートフルデザイン部門」でウッドデザイン賞を受賞しました。ウッドデザイン賞とは、「木」に関するあらゆるモノ・コトを対象に、暮らしを豊かにする、人を健やかにする、社会を豊かにするという3つの視点から、デザイン性が優れた製品・取組等を表彰するもので、建築家の隈研吾氏、プロダクトデザイナーの益田文和氏、アーティストの日比野克彦氏、慶應義塾大学大学院教授の伊香賀俊治氏ら各分野の専門家の方々が審査(審査委員長は赤池学氏)されます。
第1回という事で全国から822点の応募があったそうですが、その中から397点が二次審査を通過してウッドデザイン賞を受賞。表彰部門は、その特性に合わせてライフスタイルデザイン部門、ハートフルデザイン部門、ソーシャルデザイン部門に分かれていて、【森のかけら】は「木を使う事で快適性を高めたり、五感や感性に働きかける木製品」などを審査するハートフルデザイン部門に応募しました。賞が欲しいというより、どういう風に評価されるのか知りたい気持ち。
本当は「森のかけら」だけでなく、「モザイクボード」や「森のりんご、森の毒りんご」、などの商品も応募しようと思っていたのですが、イベント等も重なっていたのと、申請にあたって結構な分量の言葉を書かねばならなかったのですが、頭をひねりにひねってようやくほぼ書き上げたと思ったら、パソコンの操作ミスで一瞬にしてすべてが消去されてしまい、疲れがたまっていたこともあり、すっかり心が折れてしまい、今回は「森のかけら」だけとなりました。
いろいろな木を使ってただ35㎜角に加工しただけのシンプルな商品であっても、その数が200を越えるようになれば、それはそれで商品価値はあると認めていただけたのだと思います。もともと教育教材として作ったわけではありませんが、最近は大学や学校関係などからのご注文も増えていてありがたい限りです。しかし特殊材を扱う製材工場が淘汰され、木材市場が縮小していく現状の中、多様な樹種を集めるという事はこれからはかなり困難になってくると思われます。
そんな中で私の勝手な決意としては、国内外の多様な、昔から今まで我々の暮らしの近いところでご縁があった木たちを記憶や文章、ネットなどの記録としてだけでなく、実際に触れたり、匂いや色も実感できる実物として残していくためにも、これからも『森のかけら』を作り続けていくつもりです。それをさらに発展させて、視覚的にも触感的にも楽しめる『森のりんご』などを作っておりますが、もっと洗練された出口を目指して精進していきたいと思っております。
泊まるホテルも取れないほどに大混雑していた秋の京都。世界に誇る観光都市をなめていました。外国からも多数の観光客で賑わう京都でしたが、今回の展示会は会場が少し離れていたのと、時間的にかなりタイトで観光地を巡るような余裕が全くなかったこともあり、今が盛りの紅葉を見る暇もありませんでした。どうにか取れたホテルが展示会場から離れていて、移動に時間がかかるのと、夜の部活動で張りきって深酒したこともあって、自由が利くのは朝のわずかな時間のみ。
本当は、時間があれば恵文社・一乗寺店さんの近くにある宮本武蔵ゆかりの八大神社にも行きたかったのですが、その時間も取れず断念。実は、『おとなの部活動』で、開催場所が恵文社さんに決まった時、その名前は知らなったものの、場所が一乗寺という事で内心楽しみにしていたのです。女子部の皆さまの心には一切響かなかった(ご存じもなかった)ようですが、一乗寺といえば宮本武蔵が京都名門の兵法家、吉岡一門数十人を相手に果し合いを行った場所じゃないですか!
武蔵は吉岡一門との決闘の朝に八大神社を訪れ神頼みをしたという説と、神仏にすがろうとした己の弱さを恥じてそのまま決闘に向かったという説がありますが、あの無敵の剣豪武蔵でさえ神頼みをしたのか、いや己の剣のみを信じる武蔵だからこそ人事を尽くして天命を待ったのか、いずれの説も人間・武蔵のキャラクターを彩っています。その武蔵が果し合いに向かった時に存在していた下り松の古木の一部が今も保存してあるとの事で、どうにかひと目見たかった・・・。
ならべせめてもと、宿泊したホテルから徒歩で数分の距離であった『伏見稲荷』にでも寄って、展示会の成功を祈念してから会場入りしようと、向かったのですが、朝から既に人と車で道路も境内も大混雑!外国人観光客から修学旅行らしき学生まで、各国の言葉も入り乱れて相変わらずワールドワイドな空間。結局、手を合わせてすぐにいそいそと展示会場に向かったため、京都の紅葉は電車から遠くに眺めるばかりでしたが、美しい景色以上に多くの収穫のあった秋の京都でございました、完。
青木さんのディープな『変態論』を肴に酒は酌み交わされたのですが、ここでも運命的とでも思えるような出会いが次々にあって、あまりの巡りあわせに怖くなるぐらい。その場にいらしていたのが、九州の都城木材の五十嵐社長のご息女様。ご結婚されて今は京都にお住まいになられていて、青木さんとはご友人でこの懇親会に来られていたのですが、『おとな』のスギウラ工房の女性スタッフの方とも古いご友人で、それを通じて杉浦綾さんともお友達になられたとか。
そして都城木材といえば、40数基もの乾燥機と10名の木材乾燥士有資格者を有する、国内でも有数のスギ・ヒノキの乾燥材のプロフェッショナル製材工場。木童さんの協力工場でもあり、以前に木童の木原巌さんに連れられて、何度か工場にお邪魔させていただきました。広大な敷地に並べられた乾燥機とヒノキ・スギの製品の山には圧倒されましたが、その都城木材の息女と、木とは別の職種とのご縁からまさかこういう形でお会いすることになろうとは、まさに僥倖。
そして、その場にいらしていた京都の㈱サトウ金物店のりょうじさん。こちらは田中戸さんのご友人ということでしたが、なんとそのりょうじさんの家を建てたのが、若い頃に京都で大工をしていた下田智久君(八幡浜官材協同組合)。「愛媛というと下田君という材木関係の・・・」というところで話が繋がりました。下田君とは愛媛木材青年協議会で親交があり、以前に大工をしていたのも知っていたのですが、まさかこういう形でご縁が繋がるとは!あれもこれも向いているベクトルが同じだから。
私以外にもご縁が繋がる、繋がる!今回の展示会で新たに加わっていただいたRouさんは、愛媛出身でラジオやテレビなどでもパーソナリティとして大活躍中の漫画家・和田ラヂヲさんの奥様なのですが、青木さんが和田ラヂヲさんのファンだったらしく、「え~っ!この方があのラヂヲさんの・・・!」と驚きの出会い。ご本人の顔を知らなかった青木さんがイメージで描かれたラヂヲさんのお顔と、奥様の手によるそっくりなイラストの前で撮影会。京都の夜は更けていきます。
県外での展示会の楽しみのひとつは、夜の懇親会でもあります。開催2日目の夜は、全メンバーが一堂に揃って、チッキー(女帝・帽子千秋女史)が日頃からお付き合いのある、京都の天然染料の染め工房『手染メ屋』の青木正明さんの工房で食事会&交流会&諸々を開催させていただくことになりました。展示会前日より先行して京都入りしているメンバーは、すっかり京都の夜をご堪能されていらっしゃるようですが、疲れなど微塵も見せることなく京都3日目の長く濃密な夜に突入!
青木さんとは初多面でしたが、Sa-Rahがお付き合いされているようなお方ですから、まともなはずがない、いや面白くないはずがない!Sa-Rahでも『天然染め展』を開催されていて、この恵文社の展示会の後でも『天然染め展』をされるそうで、今後ますます愛媛ともご縁が出来そう。この青木さんは、東京大学医学部ご卒業後、大手衣料品メーカーを経て独立。京都造形芸術大学で非常勤講師も務められている異才のひとなのですが、お話しすると同い歳でした!同じ歳でも随分違う・・・
お酒が入って青木さんの『変態論』の講義が始まったのですが、これがまさに理論明快でいちいち頷くことばかり。変態というと、一般的には倒錯した性欲の意味で使われがちですが、ここで言う変態とは、『通常とは違うきわめて強くて真似のできないオリジナリティ』という意味。私の身近な材木仲間の間でも、「変態」という言葉は最大級の賛辞としてふだんから使われていますが、手染め業界でも青木さんは変態扱いされている様子。しかし青木さんによれば変態は目指すものではない。
目指した段階で、もはやそれは誰かのコピーであって、本来の変態とは似て非なるもの。例えるならばピカソやマティスのような決して真似の出来ないような異端の才こそが変態として崇められるものであって、その線を少しでも意識して狙った時点でそれは変態などではなく、普通の人が変態をコピーしただけのもの。なりたいと思ってなるものが変態ではなく、周囲が自然とそう呼んで認めものこそが本物の変態。だから決して変態を目指してはいけない。嗚呼、変態の道は深し!
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