森のかけら | 大五木材


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20140826 1話が少し脱線しましたが、アスナロという名前も曖昧さの象徴のようなところがあって、地域でそれを指し示す木が変わるのです。植物学的な分類によると、ヒノキ科アスナロ属に分類される日本特産の木で、本州の青森県以南から中国地方、四国の一部、九州までの山地に分布しているとあります。高さは20~30mにもなる常緑高木で、ヒノキに比べて、耐陰で耐湿性が強いとされています。その別名が、アテ、アスヒ、アスダロ、アテビなど。このあたりから話がややこしくなります。

 

20140826 2そのアスナロとは別に、アスナロの変種に『ヒノキアスナロ』という北方系の木があって、こちらは青森から栃木の日光あたりまでと、佐渡から能登半島の日本海側まで分布域が広がっています。性質はアスナロに似た性質のようなのですが、この木の事を青森では俗に『青森ヒバ』と呼んでいます。北海道で「ヒバ」と呼ばれる木もこの『ヒノキアスナロ』の事だそうですが、木材関係者の間では通常「青ヒバ」とか「青森ヒバ」としか呼ばないので、オリジナル名は聞くことがありません。

 

Exif_JPEG_PICTUREそもそも木材業者の間では、正式な名前や学名など問題視されることがありませんので、気にする方もいないのですが・・・。更に変種のアスナロもあるそうで、それらすべてを包括して「ヒバ」と呼ばれるというに至っては、もはや北日本ではアスナロ=ヒバなのでしょう。文献によると、わが愛媛県はアスナロの分布域には入っていないということなのですが、稀に市場に「アスナロ」が出てくることがあります。それが果たして「本当のアスナロ」なのかどうかは不明ですが。

 

Exif_JPEG_PICTURE昔、何度かアスナロと呼ばれているその木を仕入れた事もありますが、直後に売れてしまい今となっては果たして植物学的にどう分類されるのか知るすべもありません。売れてしまいました。油っ気の少ない、淡いヒノキというぐらいの印象しか残っていません。当時はアスナロの事にそれほど興味もありませんでしたし、流通そのものが四国島内で完結していたので、県外でのアスナロの立ち位置など考える事もありませんでした。今にして思えば、置いておくんだったと後悔していますが・・・




20140825 1本日はようやく実物のアスナロについて。『あすなろ物語』という本との出会いから考えても、『今日のかけら』で一番最初に取り上げるべき木であったと思うのですが、それがようやく今頃になったのには事情があります。まず、今でもそうなのですが、私自身アスナロという木がよく分かっていません。ものの本には詳しく解説してはあるものの、実体験として森に立っているアスナロの木を見たこともありませんし、これぞ間違いなくアスナロ!と断言できる自信もありません。

 

20140825 2というのも、アスナロという木はつかみどころのないというか、正体が分かるようで分からない不思議な木なのですヒノキ科アスナロ属に分類されるこの木は、地域によって実に多くの名前を持っているのと、この木の名前を冠して呼ばれる木がいろいろあって、どれが本当なのかよく分からないのです。地域によって木の名前は、圧倒的に方言名の方が優位で、例えばそれが植物学的には正しくなくとも、地域ではそれで会話や流通、文化が成立していることはままあります。

 

20140825 3例えば、『イチイ』にはオンコ、アララギ、アカギ、ムラサキギ、シャクノキ、スオウ、ミネズオウなど多彩な呼び名がありますが、1つの名前がいろいろな木の事を指す場合もあります。例えば、『ナンジャモンジャ』という変わったというかふざけた名前の木がありますが、これは「この木はなんじゃ?」と尋ねたところ、尋ねられた人が聴き取れずに「なんじゃもんじゃ?」と訊きかえしたのを、尋ねた人が木の名前だと勘違いしたという落語のような話が由来の木があります。

 

20140825 4名前の由来してからそうですから、特定の木というよりは得体の知れない奇妙な木に対する形容的な意味で使われることも多く、全国各地にこの名前を冠した木が沢山あります。私も数年前に実家に帰省した時に、この名前のプレートをつけた木を目にしました。植物学の権威・牧野富太郎博士によると、この名前を冠した木は全国に8つあり、その正体はカツラ、イヌザクラ、アブラチャン、クスノキ、ヒトツバタゴなどだそうですが、曖昧さもある意味文化の幅の広さだとは思うのです。




★今日のかけら・#009【明日桧/アスナロ】 ヒノキ科アスナロ属・針葉樹・四国産

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20140824 1昨日、話が出たところでそれに関連付けて本日は『アスナロ』について。私にとってアスナロは思い出深い木ですが、それは実物の木としてではなく、物語の中に出てくる木として。初めて私がアスナロに出会ったのは小学5年生の時。夏休みの宿題に読書感想文があったのですが、その時母親が買ってきてくれたのが井上靖の『あすなろ物語』でした。当時情報量の少なった田舎で、母親がときどき本を買ってきてくれる本は私にとって大袈裟ではなくて『世界』を知る貴重なツールでした。

 

 

 

20140824 2あすなろ物語は、そんな私にとって実に思い出深い本であり、『小説』というものを最初に意識するようになった本です。この物語は、6つの編で構成された200ページ前後の中長篇で、難しい文体が使っているわけでもなく、子どもにとっても読みやすい本だと思うのですが、改めて読み返してみると、当時は気づかなかった人生の機微が随所に織り込まれていて驚きました。当時は理解できる言葉だけ拾い集めて読んでいたのだと思うのですが、それでも充分に面白く感じました。

 

 

 

20140824 3あらましを説明すると、天城山麓の小さな村で、血のつながりのない祖母と二人で土蔵で暮らした少年・鮎太が主人公。北国の高校で青春時代を過ごしたのちに新聞記者となり、やがて終戦を迎えるまでの体験が描かれています。その過程で出会う6人の女性との出会いも描かれているのですが、両親がいるにも関わらず両親と離れ祖母と暮らす事情や年上の女性との交流など、それが何を意味するのかもよく分からずに読んでいましたが、鮎太が不遇な環境にあることだけは分かりました。

 

 

 

20140824 4作者井上靖の自伝的小と紹介されていますが、作者は「自伝小説ではありません。あすなろの説話の持つ哀しさや美しさを、この小説で取り扱ってみたかったものです」と語っています。両親の仕事の関係で、幼い頃乳母さんが私たちのや家の面倒を見てもらっていた時期があり、祖母と暮らす梶太に感情移入しやすかったのと、『巨人の星』に代表される『不遇な主人公が耐え忍び栄光を掴む姿』に対する強い憧れのような屈折した思いが混然となり、この物語にのめり込んだのだと思います。

 




20140823 1井上靖の小説『あすなろ物語』は、人生の壁にぶち当たりながら逞しく成長していく主人公・鮎太の姿に、アスナロの木の姿を重ね合わせ、人生の悲哀を謳い上げています。「あすは檜になろう、あすは檜になろうと一生懸命考えている木よ。でも、永久に檜にはなれないんだって! それであすなろうと言うのよ。」叶わなくとも努力し続けようとする思いがアスナロに託されているわけです。当時その言葉と、アスナロという木の名前の由来に強い感銘を受けたのをよく覚えています。

 

20140823 2今考えれば、私が私が木の物語やその背景に興味を持つようになった原点だったと思います。ただその頃は、ヒノキという木が木材界の中でどういう位置を占めているのかなどということは分かりませんでしたが、明日こそはヒノキになろういうぐらい毎日望まれる木なのだから、さぞかし立派で凄い木なんだろうというぐらいの感覚でしかありませんでした。ましてやそう願うアスナロという木を見たことすらもなかったのですが、妄想の中ではアスナロは逞しく成長していったのです。

 

20140823 3作品の中でこういう場面があります。鮎太の友人たちの誰もが「自分こそは檜だ」と信じて成長していこうと努力している中で、鮎太は一人「自分は檜ではない。あすなろでしかないのだ」と考えている。また、そういった態度を、「だって貴方は翌檜でさえもないじゃあありませんか。翌檜は、一生懸命に明日は檜になろうと思っているでしょう。貴方は何になろうとも思っていたらっしゃらない」と、思いを寄せている未亡人に見抜かれ非難される。今思えば何と含蓄のある言葉!

 

20140823 4ただ当時はこういう機微を読み取る力はなく、少年時代に私にとっての『あすなろ物語』は、土蔵で祖母と暮らす鮎太の子供時代の描写と、「あすは檜になろう、あすは檜になろうと考えていても、永久に檜にはなれないんだって!」という言葉が占めていて、戦後の時代背景の混乱も、おとなになった鮎太の苦悩も、遠い遠い世界の話のように感じられたのです。文庫本の帯に書かれたコピーが、私のあすなろ物語に対する感情のすべて・・・『夢を見ても許されるのは、何歳までなんだろう。』




20140822 1ミントがそれほど恐ろしい植物だったとはつゆ知らず、家内が軽い気持ちで植えたわずかなミントが、爆発増殖!前に草刈りした時に、いつもよりミントが多くていい香りがするな~など呑気な事を思っていましたが、先日草刈りしようとしたら、一面がミント!あまりの増殖ぶりに、ハーブ園でも開くつもりか!などと思いながら、通路を塞ぐまで増殖した分のみ草刈りして、ミントにはあまり手を出さなかったのですが、あまりの支配力に不安がよぎり、HPで調べて驚愕~!!

 

20140822 2慌てて残りのミントを刈ったのは言うまでもありませんが、その再生能力はバイオハザード並み!切られても切られても仲間を増やし、そのあたりの以前の支配者であった蔦系植物を一気に席巻。ハーブの匂いもほのかに香る程度なら優雅な雰囲気が漂うものでしょうが、あまりに増えすぎると鼻をつくほど強い刺激臭となります。なにより、お洒落にされ映ったその光景が、実はテロだったと思うと、楽しめるどころではなく、早めに駆除しておかねば大変な事になると思うと、戦慄!

 

20140822 3欧州あたりでは雑草扱いされるレベルだとか。何だか調べれば調べるほど、その猛威に背筋が震えてくるのです。他者を制圧する植物としては、ガジュマルアコウホソバイヌビワなどの『締め殺し系』が有名です。彼らは見た目にも宿主に巻きつき見た目にも苦しさが伝わってきて、自然界の厳しさをまざまざと見せつけられ、生きていくって大変なことなんだんなあと感慨深くなるものですが、ミントの場合は見た目の爽やかさと裏腹に、静かに増殖して支配力を広げる点がえげつない。




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