森のかけら | 大五木材


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裏の小屋に少しずついろいろな遊具を設置しているのですが、いま流行りの体幹バランスをとりながら綱渡りをするスラックラインは大人気。小さい子から大人まで挑戦しますが、これが見た目以上に難しくて、ただラインを張り伸ばしただけなのにみんな夢中!ちなみに私は体重オーバーでラインが地面にまで着いてしまうので自粛しています。学校が休みの日とかになると、ここは児童クラブかと見まがうほどに子どもたちが集まってきます。特に宣伝などしていませんが、子供たちの口コミで『遊び場所』として広がっているみたいです。

これも町の中で少しは空いた土地のある材木屋の使命(笑)。最近は違う校区の子供たちまではるばる自転車でやって来るようになっています。その子たちは、小屋のどこに何があって、どういうルールで何をどう使えばいいのか分らないのですが、そこはそれ、「ご近所の常連さん」とかがいらっしゃいますので、彼や彼女たちからルールや遊び方を教わります。そんなご近所のお子さんたちは、何がどこにあるか、おもちゃの遊び方も熟知していて、「さあ、今日はどれで遊ぼうかな~」と、もはや小さなモニターレベル

私は田舎の生まれなので、子どもの頃は近くの山が遊び場で弟たちと秘密基地を作ったり好き放題していましたが、今の子どもたちには秘密基地を作るような場所も無く、遊びに行くにもお金が必要だったりして可哀想。だからといってこれ以上来られても仕事に支障が出るので、ほどほどぐらいで・・・。自分の子どもが小さかった頃は、商品の撮影のモデルを頼むと、喜んでやってくれたのですが、思春期に入ると頑なに拒否されるようになり、武骨なオッサンの手で写真を撮っていました。それで小さな常連さんにお願いしてみると快諾!

森のりんご』をいくつか掌に載せて数枚か写真を撮らせてもらいました。小さな可愛い掌に包まれるりんごのほうが画になります!やや硬めの広葉樹で作られたりんごんの硬質感が華奢でやわらかそうな皮膚のうえで一層引き立ちます。以前はこうしていつでも傍に小さなモデルさんがいて、それが当たり前のことでした。嗚呼、随分と時間が経ったものだとしみじみ。そしたら、写真を撮られることが嬉しかったのか(手モデルですが)「またモデルさんしてあげるね」と小さなモデルさんから心を奮い立たせてくれる嬉しいお言葉!

 




悪魔の爪* 

掌にそげらが刺さると痛い木のベスト3は何?なんていう話題で盛り上がるというのは、掌に切り傷や擦り傷だらけの材木屋のあるあるネタだと思います。何がもっとも痛いかというのは個人差があるのと、専門的な樹種を扱っているところだと頻度の問題でどうしてもそういう木になるもので、これこそ一番!(決して名誉な事ではありませんが)というのは決められないと思います。私の感覚ではアイアンウッドのような硬質な材のそげらは柔らかい皮膚の奥まで突き刺さるので半端なく痛いのですが、それゆえに注意して取り扱っています。

今までの数々の痛い経験から、気をつけるようになったので、最近は硬い木であまり酷い怪我をしたことはないのですが、むしろそういう意味で怖いのは油断していて不意をつかれたとき。例えばスギ。乾燥してしまえばかなり軽量で、住宅の下地から造作まで非常に汎用性の高い素材で、毎日触っていると言ってもいいほど、何かしらの形でスギには触れています。それゆえについ油断してしまうのです。しかもそれは、人工乾燥なり天然乾燥によってよく乾いたスギほど危険が潜んでいます。先日、カラカラに乾いたスギの板を加工していた時の事。

弊社の加工機は旧式なので、片方から材を送り込むと加工して自動で戻ってくるようなオートリターン機能などがついておりません。材を加工機の突っ込む人と受け取り送り戻す人の2人組で作業をします。その日は私が材を受け取る側で作業をしていました。何十枚ものスギの板をずっと削っていると注意も散漫になっていて、手元をよく見てなかってんでしょう。ザクッ!そげらとは違う別の感覚の激しい痛みに思わず手を払いました。色白の私の掌に赤い小さな穴。そこから滴る赤い血・・・何かが突き刺ささりました。

スギに限ったことではありませんが、乾燥すると粘りの無い節が加工などの衝撃によってポコンと抜け落ちてしまうことがよくあります。いわゆる抜け節、欠け節というやつです。これが材の変面部分で起こった場合はよく分るので、補修等もしやすいのですが、問題は材の端とか角で起きた場合。ちょうど角のところが鋭利な鳥のクチバシのような形状になるのですが、これが材の側面だと気づきにくいのでつい油断してしまうのです。私はこれを『悪魔の爪』と名付けていて、大きな怪我をしないための注意喚起だと思うようにしてます。

というもっともらしいことを言って自分のおっちょこちょいぶりを誤魔化しているだけなのですが(笑)。しかしこの『悪魔の爪』はやっかいもので、結束しようとするときも紐がここに引っかかったり、養生のビニールが裂けたりと、文字通り悪魔のごとき所業!補修しようにもここまで節そのものが欠落してしまうと補修も結構大変。下地でその必要もないとなるとそのままにしておくのでついさっきの事なのにまたその存在を忘れてまた「悪魔の爪」の餌食に!これも物言わぬ木のささやかな抵抗。木だって削られたら痛いもんね。

 




この数年で中学、高校や大学などの学校との距離が急激に縮まっていて学生の体験学習や授業に使う教材、工場の見学、あるいは校内の木の伐採などいろいろな形態で学校と関わらせていただく機会が増えてきています。こちらから何か働きかけているとか特別に営業しているというわけではないのですが、ご縁が出来たご来店された先生や生徒が、学校の友人・知人に「いろいろな木の端材を売っている変な材木屋がある」と口コミで広げていただいた結果だと思います。転勤や卒業、就職でそのネットワークは徐々に県外にも広がりつつあります。

営業力の無い弊社としては願ったり叶ったり。しかもそうやって噂を聞いてご来店される先生や生徒は、「少し変わっている」とか「偏屈な」という注意事項を理解したうえで来られるので、「スギやヒノキの板が欲しい」なんてノーマルな問い合わせはほとんどありません。これがまた嬉しいというか、説明手間が省けて凄く助かるのです。「ちょっと変わった木を探しに来たんです」なんて声を聞いちゃうと、どれどれなんて身を乗り出してしまって余計なサービスまでしてしまいそうになります。まあ、そういう気持ちでしているのが、『学生はいつでも端材20%OFF』。

好みの端材探索もいいのですが、学校の授業で使う教材としての活用もありがたいです。その中でも弊社の持ち味がもっとも発揮できて、私としてももっとも嬉しいのは、「国内外のいろいろな樹種で揃えて欲しいのですが、樹種の選択はお任せします」というご依頼。OOとOOの木という条件が入ってくると、取扱樹種数こそ多いけれど、量はたいして持っていない弊社としては、端材といえども同じサイズである程度量を揃えようと思うと端材(赤身)だけでは足りず、本体(トロ)にも手をつけずにはいられなくなります。当然のことながらトロはお高い!

個人が趣味嗜好品として買い求められるものならば、少々お高くてもいいモノ使いましょうとお薦めもしますが、学校となると予算も決まっているのであまり高いものになると、量が抑えられ1人あたりの使える量が減るのも忍びない。なので、こちらの都合を優先させていただく『お任せ』であれば、多樹種でご用意できるのです。今回ご注文いただいたのは、技術の授業で「木のスプーン」を作るための端材。一応何の木か分かるように樹種ごとに分けて名前を書いてます。本当はそれぞれの物語まで書き添えたいところですが、まずは森の入口に一歩足を踏み入れてもらってから!

 




私が陰陽師を意識するようになったのは大学生の時にある小説を読んでからです。その存在そのものが妖怪とも言われる知の巨人・荒俣宏が持てる知識を結集させ渾身の思いを込めて描いた小説デビュー作『帝都物語』。平将門の怨霊により帝都破壊を目論む魔人・加藤保憲とその野望を阻止すべく立ち向う人々との攻防を描いた壮大な物語です。昭和時代の最後に出てきたトンデモ小説に私の心は鷲掴みにされました。全巻揃えると背表紙に『帝都物語』という言葉が現れるのが楽しみで、勿論外伝も含めて全巻揃えて何度も何度も読み返しました。

私の周囲のSF好きはみんな読んでいました。男の子がはまる要素が至る所に散りばめられていて、陰陽師という言葉も、風水師水虎、式神なんて言葉もこれで覚えました。魔人・加藤保憲と戦うのが、スーパーマンみたいな超能力者ではなく渋沢栄一、寺田寅彦、幸田露伴といった実在した人物という設定も面白かったです。小説は大ヒットして、しばらくしたら映画化されることになりました。それがまた更に私の心を揺さぶることになるのです。話があまりに壮大なため、映画化されたの前半部分だけでしたが、脚本を手掛けたのは当時新進気鋭の映像作家、林海象。

『夢見るように眠りたい』というモノクロのサイレントムービー(部分的には台詞あり)を作った新世代の映像作家。イラストレーターの和田誠さんが描かれたチラシも素敵でした。さらに監督は、かの実相寺昭雄!子供向け番組のウルトラマン、ウルトラセブンに斬新なカメラアングルと哲学を持ち込んで当時の少年たちを理解不能なワールドに迷い込ませた張本人(賛辞です!)。キャストも勝新太郎、嶋田久作、原田美枝子、坂東玉三郎、平幹二朗、宍戸錠、中村嘉葎雄、大滝秀治、西村晃など豪華!製作費も当時破格の10億円。これは一体どんな作品になるのだろうか?!と観る前から否が応にも期待感のハードルが上がります!唯一不安だったのは魔人・加藤保憲を演じる嶋田久作という俳優がこの作品が映画デビューだったということ。ところが映画を観たら、その独特の風貌はもうこの役のために生まれてきたのではないかと思うほどのはまり役でした。

その後もしばらくはその印象が強すぎて何の役をしても加藤保憲にしか見えませんでした。映画では平幹二朗が雰囲気のある陰陽師を演じていましたが、他にもオカルティスト大集合の忘れらない異色作品となりました。このあたりから、全体的にバランスのいい映画よりも、何か一点突破で突き抜けたような映画に惹かれるようになりました。おお、ここにも今の変態材木屋の種があったか!学生時代の思い出をこんな形で綴れるなんて、材木屋は素敵な商売(^^♪ これも陰陽師のお導きかもしれません!?

 




昼休みを紫電改展示館で過ごしたので、少し遅めの昼食を、県道沿いの飲食店に入ったところ、たまたま隣の席に座った二人連れのうち、年配の方が話しかけてこられました。「おたくら材木屋さん?」私たちが大五木材の社名の入った3t車から降りて来るところを見られたので、木工好きで話好きな人かなと思って、こちらも軽い気持ちで受け答えしていると、この人が実はとんでもない方だったのです。ご自身は高知県の大工さんで以前は松山にもよく仕入れや現場で来ていたとのこと。今日は体調がすぐれないので病院に行った帰りだという事。そんななんでもない話が続いていました。


まあ、この辺りの方だとご縁もなさそうだけど折角なんで名刺でも交換させていただこうとしたら、その人が「大工とは別にこういうこともやってるんよ」とある名刺を差し出されました。その名刺に書かれていて肩書は、「陰陽師」!知らない人がいらっしゃるかもしれないので軽く説明すると、陰陽師(おんみょうじ)とは、古代日本の律令時代に陰陽道に基づいた呪術や占術を行い、国の祭祀を執り行ったり、未来を占ったり、願望成就や厄災祓いを行ったりする職に就いていた人を指します。後には陰陽道に関する行事をつかさどる職の人後に、民間にあって加持祈禱(じきとう)を行う者もそう呼ばれるようになります。平安時代の陰陽師・安倍晴明は、映画や小説にもなっていてよく知られた存在です。

小説や映画では陰陽師が、呪文を唱えれば超人的な能力を発揮能力者として描かれることが多いので、こういう話ってどうしても眉唾な話として語られることが多いのですが、私はそういう話が大好きなので名刺を見て一気にテンションが上がりました!現代においても陰陽師の肩書を持つ人がいらっしゃる人がいるのは知っていたものの、実際にこうしてお会いするのは初めてだったので、木の話の時以上に興奮しながら、矢継ぎ早に質問を浴びせ続けました。その方の家がもともと高知で由緒ある神社で、跡継ぎになり修行をして陰陽師になられたのだとか。

それで大工にもなりたかったので、大工兼陰陽師となり、その関係で神社などの建築にも数多く携わってこられたそうです。それほど信仰心が無いような人でも、家を建てる時には風水や鬼門を気にされるように、昔から日本人はここ一番という大切な時は見えざる神力に頼ってきました。なので陰陽師が大工さんで家を建てるというのは理に叶っているし最強の組み合わせだと思います。にも関わらずどこか怪しげに聞こえてしまうのは、やはり小説や映画の超人的能力を持つ陰陽師というイメージのせいだと思われます。いろいろと実に興味深いお話を聞かせていただきました。続く・・・




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