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唐突ですが、ウルトラマンに登場するレッドキングという怪獣をご存知でしょうか。全身が蛇腹のような凸凹のある特徴的なデザインで、極端に頭が小さくとにかく強くて凶暴。シリーズにも何度も登場して、ウルトラマンを苦しめ、当時の子どもたちにも強い人気を誇った怪獣です。当然私もソフビ人形を持っていました。私は、レッドキングの他にはゼットンやエレキング、キングジョーなんか大好きでしたが、当時の怪獣の造形はとにかく素晴らしい!今でも収集したくなります。
そのレッドキングのキャラクター設定としては、『古来より強靭な肉体を誇っていたレッドキングの種族は超能力を身に付ける必要がなかった。後にそれが災いして他の怪獣に進化の面で遅れ、現代では30頭程度しか残らない絶滅危惧種に指定され保護されている。』なんて背景があって、実に作りこんであるのですが、なぜ突然怪獣の話を始めたかというと、押水倉庫から移動してきた輪島には、レッドキングの異名を持つ人物がいるのです。それがこちらの鳳至木材の四住(しすみ)一也専務。
以前に『今日のかけら』で『能登ヒバ』を取り上げたときに少しだけ四住さんについて触れましたが、今回は詳しくご紹介。能登ヒバを見るために今までに能登には何度か来ていたのですが、それは別の製材会社の方とのご縁で、能登で四住さんの会社にお邪魔させていただくのは初めて。村本さんにお願いして無理して工程を組んでいただきました。木青恊でお世話になってからお会いするのは数年ぶり。四住さんがなぜレッドキングと呼ばれるかというと、どちらも「最強」だから。
なにが最強なのかと尋ねると、「いろいろな意味で」と意味深に笑う村本さんを前にそれ以上は聞けませんでしたが、とにかく最強!しかも四住さんは2代目ということで、以前にはいらっしゃった初代レッドキングを襲名されたそうです。円谷プロの書物には、「恐竜とキングコングを合体したような怪獣で、この上なく凶暴で赤い血を見ることを何よりも好む」と書かれていますが、血を好むとか凶暴かは別として、能登ヒバに関する思いについては間違いなく怪獣並みの力をお持ち。続く・・・
戸田君に限らず、志ある材木人はひとり、またひとりと吸い寄せられるようにここにやって来る。それはここには、材木屋としてかくあるべきという確固たる「信念」が具体的な形として存在しているから(単純に在庫をどれぐらい持つのかという意味ではなく)。私も含め、そうありたいと願いながらも実現できていない迷える材木人たちが(理念を表明すれば、周辺から馬鹿じゃないのかとあざ笑われ心も折れかかる中)、信念を貫くこんな無謀な人もいると勇気づけられるところ。
倉庫にはサイズや樹種によってきちんと整理された木材が山のように奥までビッシリと積まれています。倉庫自体が半端ない大きさであることと、月に1度の定例市のために中央部分を開けているので、全体像がつかみにくいかもしれませんが、とんでもないボリュームです!こちらがムラモト銘木市の時の様子。一枚一枚表情も形も違う無垢材なので、広げて並べる必要があるため贅沢にも思えるこの広い広いスペースが必要になるのです。嗚呼、屋根のある広い倉庫って羨ましい~。
いかん、いかん、羨ましいなんて言っては。羨ましがってなんかおらずに、倉庫を買えばいいだけの話ですから。危ない、危ない、何も行動しないでたた羨望するだけのつまらない男になるところでした。うちは新倉庫を買わずに、今の倉庫を改造してやり繰りする道を選択。扱っている木のモノの大きさは比較にならないほどの差がありますが、『かけらにも五分の魂』の気概!それにしても同じ市場で買っているとは思えないほどに材料の選択肢に違いが現れていて面白いものです。
実は写真はもの凄く撮らせていただいているのですが、ひと様の在庫されている材をあまり事細かく映したり、情報を公開するのはマナーに反すると思いますので、残念ながらそれらの写真は私だけの密かな楽しみに!こういう材もお持ちだという事が分かっていれば、何かの際には助けていただけることもあるのでこういうネットワークは本当にありがたいのです。ただし重くてかさばる木材の宿命で、石川から愛媛に材を送るとなると結構な値段になってしまうのが悩ましいところ。
SNSの発達で、木もネットで取引される時代になりました。フローリングやパネリングなど一定の品質が見える商品は致し方ないとしても(本当はそれも不本意なのですが)、テーブルやカウンターなどに使うような大きな一枚板などは、ネットではなく実物に対峙していただき。その重さや触感を感じていただきながら購入していただくのが理想。そう考えると、ただ在庫があるという事だけではなく、見ていただく「場面」や「機会」はもっと作らないといけないなあと・・・。
名残りは尽きないものの工程は相当にタイトですので、慌ただしく次の倉庫に移動。かほく市から北上して羽咋郡宝達志水町にある「ムラモト押水物流倉庫」へ。この後、能登半島を更に北上して輪島に向かうのですが、先に書いたように道中の信じられないぐらいの空の青さ!何度か来た能登は、いつも鉛色のどんよりした空が迎えてくれたので、印象が随分と変わりました。さて、今回の倉庫巡りのメインはここ、村本さんが岐阜や各地で仕入れられた歴々の木材が眠っているのです。
到着。以前は繊維か何かの物流倉庫だったそうですが、村本さんが買い取って今や銘木の殿堂に。ここでは毎月22日に『ムラモト銘木市』が開催され、大工さんや工務店はもとより遠方より一般の方も数多く足を運ばれています。普通、こういう市ってお客さんが動きやすい土曜日とか日曜日に開催されるのが常ですが、ムラモトでは曜日に関係なく22日。なので平日に開催することもあるのですが、それでも22日にこだわるのは、市の日付を覚えてもらうためとチラシ等の合理化!
先の市場を拝見させていただいた時も感じたのですが、どこの倉庫の整然と整理されていて材の出し入れがスムーズにできるように徹底して管理されています。村本さんは、面倒くさがり屋からなるべくしんどいことはしたくないだけよ、と笑われますが、そうすることが出来るように社員一丸となって徹底した合理化が浸透しています。出したらすぐ片づけて、誰でもどこに何があるのか分かるようにする。簡単な事のようで出来ている材木屋なかなかありません。わたくし、猛省です・・・。
仕事は段取り8割とも言われますが、こういうところは見習うべきところ。振り返れば、材を加工する時間よりも倉庫で探している時間が多いようですから・・・。ところで、今回は何か購入させていただくというわけではなく(もの凄く失礼な話ではあるのですが!)、倉庫を見学させていただくだけだったので、石川県まで買うわけでもない木を見るために行くなんて余程物好きだと思われるかもしれませんが、私の周辺そんな人ばかり。以前に私より先に『浪速のブラックマンバ』がここを表敬訪問。
先を越された私はかなり焦っており、今回の木青連の全国大会でようやく念願が叶ってホッとしているところです。浪速のブラックマンバこと、大阪府茨木市の戸田材木店の戸田昌志君は、私より10歳ほど年下ですが、私の知る限りその世代では木の知識量はNO.1!彼の綴るブログ『本物の無垢木材 ~茨木市戸田材木店・セルバの木の虫ブログ~』は、本気で木の事を学びたいと思う方は必読。私のように情緒や感情に逃げない、熱情と木への愛がギッシリ詰まった「木の読み物」です!
木の事なら何でも貪欲に噛み付き、ひとたび噛もうものなら、世界最強の毒蛇ブラックマンバのように毒液を相手の脳内に流し込んで、木材鬼ファンに感染させるという戸田君すらをも魅了するムラモト倉庫!確かにここより規模の大きな倉庫は全国にいくらでもあります。でも私たちは倉庫の規模に集まっているのではない、そこに在る木と、そこに居る人に会いたいからこそ聖地を訪れるのである。あ、今頃思い出したけどこのシリーズは『聖地巡礼』にするつもりだったので今更ですがタイトル変更~!
村本さんの見立てによると、欅・桜・水目・桂・朴・栃・ケンポナシ・栗・松・タモ・杉・栓・トネリコ・塩地・樫・木肌・ 楓・ 藤木・榧などがあったそうで、その量たるや総量600㎥!その内、あまりにコンディションが悪過ぎて使い物にならずチップに工場行きになったのが200㎥。隣にあったチップ工場までリフトで300往復!残り400㎥が有価材。その後いろいろ引き合いもあって最終的に在庫になったのが240㎥!それを自ら陣頭指揮に立って作業されたのです。
好きでなければできませんが好きだけでもできない。その話を聞いたとき、感じたのはそんな途方もない村本社長の決断に文句ひとつ言わずに従って高知にまで来て寝泊りしながら埃にまみれるスタッフがいることの素晴らしさ!ちなみにその倉庫は、材がかなり強引に詰め込まれていて、リフトが使えなかったりと、多くが人力で片づけなければならない状況だったので、スタッフが入れ替わり立ち代わり高知まで泊まり込みで実に三人で延べ165人工もかかったというのです。
ちなみに人工(ニンク)とは、土木建築関係で作業量を表す言葉で、労働者一人の1日の労働量をもとに、作業に要する延べ人数を算出したもの。この場合は大人が165人分労働したという事!もはや材木屋ではなく土木の一大プロジェクトです!この話を聞いた当時、私は高齢化や人間関係など人(スタッフ)の問題で頭を抱えており、もしこの話を受け入れるだけの体力(資金)があったとしても(現実には無かったのですが)、人の問題でとても対応できる状態ではありませんでした。
今はそれが随分改善されましたが、当時はそれが出来る村本さんが、スタッフとそれだけの信頼関係を築けている村本さんが、そういう仲間がいるムラモトという会社がとても羨ましく、眩しく見えました。決してお世辞などではなくて、会社のチームワークをこれほど羨ましく思ったことはありませんでした。零細材木屋の木の仕事って、お金だけでは片付かないことが多くて、結局誰かが汗をかかないと収まらないことばかりで、自分が動けない時、動いてくれる仲間が何人いるかが会社の値打ち。
まあ、もしもそんなスタッフが万全だったとしても、私にはこんな無謀ともいえる決断をする力と度胸は私にはありません。だって村本さんは、そのためだけにこの倉庫を買ったのです。写真だといまいち、そのボリューム感が伝わりにくいと思いますが、これが節まみれの一等材のスギ・ヒノキ・マツなどの針葉樹なら金額も分かったものですが、ほとんどがバリバリに乾いた信じられないくらい目込みの広葉樹ばかりなのですから。やはりやりたい事をするにはそれだけの『体力』が必要~!
『ムラモト・高松倉庫』に収めてあるもの、それは遠く四国は高知から運ばれてきた銘木の数々。今回、お忙しいなか村本さんに倉庫巡りをお願いした理由の1つはここにあります(もう1つは次の倉庫)。昨日書いた通り、その経緯は村本さんご自身がブログで『高知での製材所整理顛末記』として微に入り細に入り詳しく書かれていらっしゃいますが、その会社は国産材を扱う四国の材木屋なら知らない者はいないだろうと思われる老舗で、銘木なら何でも揃うといわれた名店でした。
銘木といってもいわゆる床柱や変木など床の間をしつらえる装飾性の高い材の事ではなくて、大きくて立派でなかなか簡単には手に入らない珍しい樹種・珍しいサイズ・珍しい杢を持った木といった意味の銘木。トチ(栃)やケヤキ(欅)、ヤマザクラ(山桜)、シオジ(塩地)など、四国中から集められた立派な材を沢山お持ちで、その一部は愛媛にも流通していて弊社も昔は、サクラの敷居や框でお世話になったものです。今でもその名残がわずかながら弊社の倉庫の隅に眠っています。
赤身の張った立派でよく乾燥したヤマザクラの敷居です。往時はかなりの量を動かされていたと聞いていますが、いつ出るとも分からない膨大な在庫を抱えざるをえない銘木屋の宿命で、在庫が膨張。一方でローコスト住宅の勢力拡大、和室の減少などから、銘木が必要とされなくなり、後継者問題などもあって、全国的にも多くの銘木屋が閉店に追い込まれました。銘木屋といえば木材業界の花形的存在でもあったので悲しい限りです。閉店すると銘木とて二束三文で叩き売られます。
立派な銘木たちにそんな屈辱を味合わせるわけにはいかないと立ち上がったのが村本の親分。その男気たるや、最後の粋な材木屋と拍手も贈りたくなるところですが、ここに来てその圧倒的なボリュームを見るとそんな軽口は叩けなくなります。ここに写っている木、すべてがガリガリに乾いた乾燥材。寝かしに寝かしてもうこれ以上は乾かんだろう~という木に対して、よく『完全乾燥』なんて呼んだりしますが(含水率に基づくというよりも何年寝かせか自慢的な言い回し)、まさにそれ!
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