森のかけら | 大五木材


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私にとって興味があるのは、どういうメカニズムでクロガキが生まれるのかという事よりも、そのクロガキにまつわる神秘的なエピソード。意図しては生まれない自然のきまぐれの中にこそ木の持つダイナミズムや妙味が感じられます。数万本のクロガキの中に1本出るかどうかといわれているのが、まるで孔雀が羽を広げたような木目に見える『孔雀杢』のクロガキ。昔より茶道具や高級和家具などに加工されて、好事家にとっては銘木中の銘木として珍重されてきました。

弊社が在庫しているクロガキは、そんな銘木と呼ばれるようなクロガキではありません。長さが2700㎜、幅が350~450㎜、厚みが100㎜ほどで全身に黒味が現れています。10年以上前にその見た目に惚れて仕入れたモノ。さすがにそのままでは使いにくいので、板ものとして使いやすいように厚みを三枚におろしました。すると中からは怪しすぎるような黒味の杢が!墨汁の墨を流して、漆黒の黒味から薄墨に変化していく濃淡の風合いは、まさに『墨流し』の形容に相応しい!

この丸太はかなりの高齢木で、美しい墨流しのクロガキとなって今こうして人の目を楽しませてくれていますが、その恩恵を受けているのは私たち人間だけではありません。その黒味の中に無数にあいた虫たちの穿孔跡。ここまでになると、その虫穴も含めてひとつの絵柄のようでもあります。クリモモ、ナシ、ミカンなどのフルーツウッドは虫たちにとっても甘い樹液と住処を提供してくれる貴重な存在。フルーツウッドにとって虫穴は避けて通れぬ宿命でもあります

一般的に顧みられることの少ないフルーツウッドを積極的に扱っていこうとするビーバー材木屋にとって、虫穴を受け入れざるしてフルーツウッドを使う資格は無いのです。虫穴ひとつ無いようなクロガキを欲される方は、銘木屋さんに行かれるべき。そんな銘木屋では歯牙にもかけられない虫穴のあるクロガキにこそ、光を与えられるのがビーバー材木屋の腕の見せ所であり矜持。虫たちに我が身を与えたアンパンマンのような慈悲深いクロガキに相応しい舞台がきっとある!続く・・・




今日のかけらプレミアム008 【黒柿/クロガキ】カキノキ科カキノキ属・広葉樹・愛媛県産

あくまでも私の個人的な趣味嗜好に基づくものですが、入手が難しい、その存在そのものが希少、特別なストーリーがある、などの木については、240種の【森のかけら】のレギュラーではなく、あえて仰々しくプレミア感を謳った【森のかけらプレミア36】として別枠に仕立てています。中には、「なぜこれがプレミアなの?」なんて意見もあろうかと思いますが、あくまでも私の趣味嗜好!そんな意見は聞くつもりもありませんが、その36種を選ぶ時にはかなり頭を悩ませました。

森のかけら・プレミア36の36種は以下の通り、アマゾンローズ、アマレロ、ウェンジオリーブウッドカステロキングウッド、グラナディロ、黒柿、黒檀、ココボロ、サントスローズ、紫檀、シャム柿、スネークウッドゼブラウッド、ソノケリン、ダオ、鉄刀木、チューリップウッド、バーズアイメープル、ヴィオレットウッド、パープルハート、パオローズ、パオロッサ、パリサンダー、パロサント、パンガパンガ、ピンクアイボリー、フランス黄楊、ベリ、ペロパローザ、ボコーテホンジェラススローズ、マホガニー、リグナムバイタレースウッド。30種のプレミアとレアなレギュラー6種で構成されています。緑色は「レアなレギュラー」です。 収納箱はブラックウォールナットで、全ての箱にシリアルナンバーがレーザー印字されています。本体価格¥63,000(¥68,040 消費税込・送料込)

そんな【森のかけら36】には、日本の木が1つだけ含まれています。それがこちらの『黒柿』。クロガキという樹種があるわけではなくて、カキの木の中で心材に墨で描いたような漆黒の模様が現れたものを『クロガキ』と称します。なぜそのようなクロガキが生まれるのか、その詳しいメカニズムについては解明されていないそうですが、一説にはカキノキには柿渋の元になる「タンニン」という物質が含まれていて、それと土中から吸収した成分とが化学反応して発生するとも言われています。

100年を越えた老木のカキにしか現れないとも言われていましたが、近くの農家の方から分けていただいた50年足らずの若いカキノキを製材すると、中身が黒くなっていましたので、必ずしも老木にだけ現れるのではないと思います。ただし、木材業界、銘木業界で言うところの『クロガキ』というのは、ただ単に黒味が出ているという事だけではなく、それが文様として美しい柄になっているとか、より黒味に濃淡の深みがあるなど、芸術的な風合いが求められ、それが特別な価値を生み出しています。続く・・・




扱う量が増えてくると一枚ずつ写真を撮って(当然その頃はアナログなのでフィルム!)それで保管していましたが、遠方には写真もFAXだと真っ黒になってしまうので、時間があるときは写真を郵送!急ぐときはイラストで、と今考えればおおらかでのんびりしていた時代だったと感じます。それが常識だったので、頼めば数日かかるのが当たり前で、今日頼んで明日来るなんて事は考えも及びませんでした。大手でも小手でも当時は遠くの人に木を売ろうと思ったら、描くか喋るかで伝えるしか方法はなかったのです

そのために随分と授業料は払ってきましたがとても勉強になりました。近場で商売していたら、「見れば分かるんだからゴチャゴチャ言ってないでまずは見に来い!」なんて怒られて、木は語るものではなくて見るモノでした。特に四国は橋が出来て本州とつながるまでは、物流が閉鎖的だったので、外部からのモノの出入りが限定的で、なおかつモノだけが入って来て、その背景にあるものまで伝わってきませんでした。仕入れルートが分かるのがよろしくないということで、敢えて意図的に伏せていたのかもしれません。

そういう土壌もあってか、地元ではあまり木の言い回しの語彙も少なく(そこには圧倒的にヒノキとスギがメインで、外的特徴が顕著に表れる広葉樹が少なかったという事情もあるのではないかと思います)、面白いと感じた言い回しや比喩表現はほとんどが県外で教わりました。そういう体験が知らず知らずのうちに木材の多様性に繋がり、【森のかけら】を作る土壌を育んできたのかもしれません。手間も暇もかかりましたが、昔は何とかこの木を商いしようという熱い気持ちだけはビンビン伝わっていました。

 

 

当時、広い市場で商売をしていた木材の営業マンにとって「言葉で木を伝える力」は必要不可欠なものだったはずです。今は簡単にメールで木の容姿が伝わるようになった反面、言葉で伝える必要もなくなってきて、言葉で木を語ることを放棄している材木屋も沢山見かけます。時代は移り変わりましたが、これからは木の姿かたちを伝えるための言葉の力ではなく、目には見えない背景や物語を語る言葉の力こそが材木屋には求められているのではないかと思うのです。若い材木屋諸君、聞いて木を買おう!語って木を売ろう!




最近では遠方からの注文でも、こうして並べて何枚か写真を撮ってメールで送れば瞬時に材のコンディションも確認できて商売が成立する時代です。節や木目の具合もアップで撮ればほとんど伝わり誤解もありません。私もそうして仕入れることもあるし、そうやって販売もさせてもらっています。微妙な質感とか色合いなどは光の具合などもあるので、実物でないと分かりにくいところはありますが、想像力でカバーできるレベルだと思います。ひと昔前と比べると隔世の感、遠くにまで木材が売れるようになりました。

その一方で材木屋が木を語る機会が減ったように感じます。インターネットが普及していなかったその昔は、遠く離れた場所にいるお客さんにちょっと変わった木材を売るためには、その特徴を微に入り細に入り言葉で伝えるしかありませんでした。例えば変形した耳付きの板の場合、全体が弓なりにOOぐらい反っていて、片方の端がOOぐらいプロペラにねじれているけどOOぐらい削れば直せるレベルとか、端からOO㎜ぐらいいったところに小指大の葉節がOO個あって、木目は緩めの追い柾で・・・といった具合。

伝えるほうも聞くほうもお互い電話口の先で特徴を追いかけながら、「見えない木材」を必死にイメージしていました。結局遠方から引っ張って返ってみると、イメージ通りだったり、全然違ったりと結果はさまざまでした。特徴を伝えるのがうまい人は、特徴を分かりやすい言葉に置き換えて話してくれます。地方によっては材の特徴を伝える言い回しも独特で、こういう風に言えば分かりやすいのかとか、こういう風に例えればいいのか、などベテランの材木屋さんには『言葉で木を伝える力』がありました。

最近は、説明を求めても「画像送っておきますから」ということで、言葉で伝える必要もなくなりました。確かに写真の方が間違いはないですが、なんだか物足りなく感じることがあります。私はうまく言葉で説明できなかったので、得意だったイラストにして、そこに吹き出しで説明をこれでもかと書き込んでFAXしていました(弊社で作る家具については、基本今でもこのスタイルですが)。送ってから、実物と全然違うと言われないように特徴を描き移していたものです。今見直すと当時の必死さが蘇ります。続く・・・




あまりに端材などの事ばかりアップしていると、なんだか小さな木材だけしか扱っていない『端材専門の材木店』のように思われているんじゃなかろうかという不安もありまして、一応大きめの木材も持っていますよという事で本日は大きなサイズの木の話。こちらが弊社の中で、単体の木材としてはもっとも体積の大きい木材。『トチ(栃)』の二股になった耳付きの板です。最も長い部分で3900㎜、幅が1800~最大で2100㎜、厚みが130㎜。変形しているのでカメラに収まりにくく、大きさが伝わりにくいかもしれません。

1本の原木から製材した共木が三枚。これで無傷とかであれば、恐ろしい値段がつくのかもしれませんが、そんな良質なコンディションのモノであれば逆に恐ろしくて私が手を出せません。仕入れたのは10数年前で、こういうサイズのモノが欲しいとか、探してくれと頼まれて買ったわけではなく、市場で見てその大きさに惚れこんで、店の看板に使えないかと思って仕入れたものです。大きさは圧倒的なモノの、その堂々たる巨躯にはクサリや節、入皮、虫穴など、森で暮らした長い時間の痕跡が刻み込まれています

あまりの大きさに店の「看板」として使おうという目論見は無残にも崩壊。大きすぎて動かすことすらままならず、うかつなところに置いておくと材料を移動させるのに邪魔。軒先に置いておけば屋根からはみ出て雨に濡れるとスタッフからも散々煙たがられて、結局倉庫の奥の奥へ押し込められることになりました。さすがに「これが欲しい!」なんて声がかかることはなく、倉庫の奥で埃をかぶっていました。こういうものって確かに売りにくいし、サイズが規格外ではあるものの、奥にしまっていては絶対売れません。

適度に見せておかないとその奇跡的な出会いすらないとは分かっているものの、これを引っ張り出すとなるとかなりの大作業となります。なのでなかなか表に出てくることはなかったのですが、たまたまこの上に置いていた木材に声がかかったことで何年ぶりかに奥から引っ張り出されることに!昔の記憶も曖昧で、奥に片づける前に撮った写真と見比べてみると、懐かしくもあり新鮮でもあり。トチ自身も10数年ぶりに奥から出てみればすっかり自分が来た頃とは様変わりしていて浦島太郎の感情に浸っているかも!?




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