森のかけら | 大五木材


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20100321 グッドタイミング、アピトン!①最近、家の内装だけでなく外溝工事にも「木」を採用していただく事が多くなってきました。それは【森の出口】のひとつとしても大変ありがたい事なのですが、風雪や紫外線に晒される外部の場合は、材のセレクトをより慎重に考えねばなりません。内装であれば、一定の精度が担保され、しっかり乾燥していれば、ある程度色合いや木目の雰囲気、それぞれの木の「背景にある物語」までを比較検討の材料にする事も可能なのですが、外部となるとどうしても材が限定されます。

 

20100321 グッドタイミング、アピトン!②当然価格の問題は最重要課題ですので、そこを起点とせねばなりませんが、耐久性や対候性も重要な要素になります。いつもお世話になっているワンズ㈱さんでは、ウッドデッキと併せて外部の木製フェンスもよく採用していただいております。木製フェンスの1本のサイズは、50~60X30~35㎜程度なのですが、庭全体にフェンスを巡らせる場合、結構な数が必要になります。左は最近施工されたG様邸ですが、300本を越える数を使っていただきました。

 

20100321 グッドタイミング、アピトン!③こちらのフェンスは、東南アジア産の『アピトン』を使わせていただきました。原木の様子はこんな感じです。アピトンはトラックのボディーにも使われたりするほど強度の高い木で、価格も決して高くはないのですが、問題がひとつ。それは燥に時間が掛かる事です。人工乾燥すれば良いと思われるかもしれませんが、ヤニ分が多いため強制乾燥させるとヤニが吹き出てしまいます。それを避けるため、あらかじめ大きめに挽いた材を天然乾燥で長期間乾燥させたものを使わせていただきました。

 

20100321 グッドタイミング、アピトン!④その期間実に1年!アピトンは非常に重硬な材で、生材のままでは取り扱いもひと苦労です。更に生材では塗装のノリも悪いので、乾燥したものが必須なのですが、そう都合よく乾燥した材が蓄えてあるわけではありません。今回は、南洋材の師匠・瀬村製材所さんがたまたま挽き置きされていたものをグッドタイミングで供給していただいたのです。いろいろな材のエピソードをお伝えして、木の可能性や楽しみを味わっていただく事が私の仕事ですが、その川上には、山の木を伐採する人、それを集材・運搬する人、そしてそれを製材する工場、が切れることなく連鎖して繋がっています。どこがひとつ欠けても材は手元に届きません。今日そこに何気なくある材も、実はいろいろな方のアシストによってやって来たものです。そう考えれば、なるべく無駄を出さずに大切に使わせてもらわねば申し訳ありません。目には見えないところにもたくさんの思いが詰まっています。




道後の『ふなや』さんの日本庭園・詠風亭に設けられた足湯の座面に使っていただいたのは、中南米産の『セドロ』です。観光客を乗せた大型バスやら地元の車が頻繁に行き交う通りから一歩足を踏み入れると、そこは清流流れる閑静な和の空間が広がっています。そこに佇む足湯屋を施工されたのは、もう4、5年ほど前になると思います。当初、円形の足湯の座板という事で頭を悩ましました。直径が2mぐらいありましたので、当然の事ながら1枚ものの板を削りだすという事は不可能だし、2枚や3枚で剥ぐにもロスが大きすぎます。そこで製作をお願いしたウッドワークかずと池内君と相談して考えたのが、円全体を8つのパーツに分けて、それぞれを裏側からボルトで連結する方法。これだと木目の木取り次第では、つながった円のような雰囲気を損なわないように仕上げる事が出来ます。

ただ問題も幾つかあります。これでも結構なカットロスが出る中で、木目が連続している雰囲気を演出するためにはかなりの大きさも板が何枚も必要になります。しかもなるべく木柄の似た乾燥した木。また、温泉の足湯の座板という事ですから、お湯が散ったり熱を帯びるのではという心配。材となった木にとって、湿気は腐食の最大の要因です。こういう場合、必ず「水に強い木を」という要望が出たりするものですが、それも在庫やサイズ、価格との兼ね合いになります。

何にでも完璧に対応できる材がいつでもどこにも揃っている訳ではありません。手持ちの乾燥した材の中から、いろいろな条件を鑑みて(材特性、サイズ、加工性、価格・・・)、その中でベストの選択をしていくという事になります。幸いにも設計・施工をされたのが、商業店舗などをたくさん手掛けられた百戦錬磨の須賀デザイン工房久須賀佳夫さんだったので、そのあたりの理解は深く、ご提案を受け入れていただきました。湿気対策もご検討いただき、いざ「セドロ」での出番と相成りました。セドロについての詳しい説明は、以前にブログや『適材適所』でも取り上げさせていただきましたが(NO.120)、板目の雰囲気は欅に似ていて、柾目の雰囲気はマホガニーに似ているという、剛と柔の質感を併せ持ったような不思議な材です。生地のままだと分かりづらいのですが、塗装する事でその特徴が際立ってきます。

足湯は屋根があり直射日光は遮られているものの、久し振りに訪れてみると、施工時よりはやや色合いが淡くなっていました。でもそうなってむしろ、遠い外国から来たセドロが閑静な日本庭園の中にすっかり溶け込んでいました。寛容性も伝統を継承する重要な要素だと思います。セドロはセンダン科ですので防虫性も高く、腐朽にも強い性質があります。加えて設計や加工、塗装を工夫することで、こういう場面でも使う事が出来ました。地元に根付いた建物に地元の木を、という考え方にまったく異を唱えるものではありませんが、そこに固執しすぎると、木本来の特性をうまく引き出せない場合もあります。地域を優先するか、特性を優先するか?いろいろ考えはあるでしょう。それも含めてこういう場面ではどの木を使おうか、ワクワクした気持ちであれこれ思いを巡らし、材をセレクトする時の快感はおそらく誰にも分かってはいただけないでしょうが、私はそこに材木屋の醍醐味を感じます。

 




20110319 ふなや・詠風亭の足湯①昨日の道後でのイベントの際は、予定より少し早めに会場に入ったので、急いでブースを設営してちょっこし道後を散策に出掛けました。道後温泉の『湯玉ハガキ』など、道後でのお仕事も結構増えて、頻繁に来てはいるのですが、ほとんどが駐車場と目的場所の往復なので、道後の街を撮るアングルもいつも同じものばかり。こういうタイミングを待ちかねていました。とはいえ、自由になるのは10分程度。時間が無いのであれこれ行くわけにもいかないので、ダッシュで道後の街へ!その際にホテルのエントランスに飾ってあったのがこちらのミカンのオブジェ。何もプレートも無かったのでホテルで作られたのかどうかも不明ですが、なかなかの力作!私も『ミカンの木』を使った商品を以前から考えて試作しているのですが、未だ決めてがありません。こういうモノを見ると触発されます。

 

 

20110319 ふなや・詠風亭の足湯②さて、限られた時間で向かった先は、道後の老舗旅館『ふなや』さんの詠風庭(えいふうてい)。『ふなや』さんは、道後公園に隣接し、創業380年の歴史を持つ道後有数の老舗で、天皇・皇后陛下をはじめ、皇族の方々も泊まられる格式ある旅館なのです。昔、母がまだ元気だった頃、記念日に両親がこちらに泊まった事がありました。家族も集まって、その時初めて客室に入らせていただきましたが、華美に走らず押さえの効いた、上品で落ち着いた佇まいはさすがの風格がありました。

 

20110319 ふなや・詠風亭の足湯③そして、中央に渓流も流れる1500坪の日本庭園・詠風庭は、正面玄関の門が道路に面していて、営業時間内であれば、一般の人も開放されていて中に入る事が出来るのです。その向かいには、愛媛の誇る文豪・正岡子規子規記念博物館があります。こちらの庭園は、かつて松山中学校に赴任した夏目漱石や、子規がよく訪れたという由緒ある場所で、昔は花月亭と呼ばれていたそうです。いつ来てみてもゴミどころか落ち葉ひとつ落ちてないほど手入れが行き届いています。

 

20110319 ふなや・詠風亭の足湯④この前を通ると、よく挙式の撮影なども行われています。その詠風庭の一角に、いい雰囲気の足湯があります。道後の温泉街のホテルや旅館には、宿泊客以外も気楽に楽しめる足湯が設けられていますが、こういうロケーションの中だと一層風情が増します。一度に多くの方が利用できる円形型の足湯は多いのですが、こちらの足湯は腰掛ける座面に木を採用いただきました。ご縁があって、3年ほど前に納材させていただいたのですが、その木は中南米原産の『セドロ/CEDORO』です。詳しくは明日。




20110318 燻煙木材とかけら①先日の『ビジネスマッチングフェア』では、異業種の方との新たな出会いもありましたが、身近な業種においても嬉しい出会いがありました。こういう邂逅って、いつどのタイミングでどういう形で出会うかという事が重要です。こちらのアンテナが立っていなかったり、錆ついていると、折角のご縁にも気がつきません。常にアンテナを磨いて感度を高め、角度を微調整しておかねばなりません。今回抜群のタイミングでお会いできたのが、こちらの㈱C.ECOさん。はるばる香川県よりのご出展でした。

 

20110318 燻煙木材とかけら②建設関係の会社も数点ブース出展されていましたが、飲食関係と違って具体的に「形として見せれる商品」が少ない職種ですので、どうしてもパネルや紙資料での展示となりがちです。その中で㈱C.ECOさんのブースは立体展示もされていて気合が入っていました。そこに日頃見慣れた、【森のかけら】が!と思ったら、同じキューブ状ではあるものの別物でした。こちらの会社では木の薫煙乾燥に取り組まれていました。それを更に草木染めにいたものがこちらのサンプル用のキューブでした。

 

20110318 燻煙木材とかけら③燻煙(くんえん)乾燥というと聞き慣れない言葉だと思いますが、文字通り木を燻して乾燥さえる技術の事です。誤解を恐れず簡単に言えば「木のカツオブシ」のようなものです。一般的には蒸気で木を乾燥させるのですが、燻煙の力で乾燥させると乾燥工程における割れやねじれ、狂いなどが少なく、木の強度の劣化も低いと言われていますが、そもそも個体差の大きい天然素材を比較するデータや数値化がどこまで有効的なものかについて懐疑的なので、私自身はその効果を断言は出来ません。

 

20110318 燻煙木材とかけら④むしろ燻煙によって防腐、防虫効果が増すという事は、昔ながらの囲炉裏に燻された古民家に虫が付きにくいという事で実証されているので、そちらの効果の方はお勧め出来ます。木材の乾燥方法は低温乾燥や高温乾燥、高周波乾燥など機械的に乾燥炉を使って乾燥させる方法と、時間を掛けて天日で乾かせる天然乾燥の2種類があります。一般的には、前者をKD材(Kiln Dry:キルンドライ、後者をAD材(Air Dry:エアドライとして区別しています。木の持ち味である艶や光沢をを損なわずに乾燥させるには天然乾燥に勝るものはないと思います。しかし、梁や桁など大きな材をしっかり乾かそうと思えば1週間や2週間では到底無理です。建築期間が圧倒的に短縮された現在においては、のんびりと木を乾かせる天然乾燥では対応できない場合も多いのです。

 

 

20110318 燻煙木材とかけら⑤アフリカのマメ科の木、例えばブビンガゼブラウッドなどになると、天然乾燥では1年掛けても表面からわずかばかり。とても内部までしっかり乾かせることは不可能に近く、最後は人工乾燥の力を借りねば、その後の収縮が発生するリスクを抑えきれません。乾燥方法にも それぞれに一長一短はあります。厚みが90㎜とか100㎜クラスの厚板になると、数年倉庫で寝かしておいても安心出来ません。自社の在庫に関しては、いつ使えるかどうかの判断は、最終的に自分の経験と勘に拠るところとなります。私の場合は、それをいつ仕入れたか忘れた頃が目安!というのは半分冗談、半分本気です。木が乾くには時間が必要です、【森のかけら】といえども。この燻煙乾燥木材には、その技術が確立された頃に出会いましたが、あれから随分と進化したようで、草木染めなどいい雰囲気でした。今なら新たな出口が見つかりそうです。

 




20110317 福祉でない福祉ビジネス①昨日重なっていたもうひとつのイベントは、道後のホテルで開催された『愛媛県障害者授産工賃倍増計画支援事業・企業X福祉事業所 交流会』でした。お昼までアイテムえひめで『ビジネスマッチングフェア』に顔を出した後、慌てて道後に移動。肌寒いと思っていたらチラチラと空から白いものが!ここ松山でこの様子だと東北の被災地は大変な状況だと思います。地震、津波、放射能汚染、寒波と次々の襲い来る困難にさぞ大変な思いをされていることと思います。その中にあって、暴動もない被災者の方々の毅然とした行動には本当に頭が下がります。こういう状況の中、各イベントをはじめブログ等も自粛される動きがあります。それぞれの方の考え、見識だと思いますが、私は自分の父親が亡くなった晩も泣きながらキーボードを叩きました。続けると決めた事をいかなる試練があろうとも貫き通すという選択があってもいいと思います。

 

20110317 福祉でない福祉ビジネス②いついかなる時でもそれぞれの立場で自分に出来ることのベストを尽くすのみ。被災者の皆さんを憂う気持ちを心に秘めて、与えられた仕事に全力を注ぎます。今回の私のお役目は、愛媛木材青年協議会で行っている『どうぞのいす活動』と授産所さんとの関わり方についての事例報告をする事です。この不況で財務内容が厳しいのは授産所とて同じ事です。毎年加工をお願いしている『どうぞのいす』の工賃は微々たるものではありますが、こういう機会にお声を掛けていただいて断る理由はありません。本当は次代を担う若手会員に頑張ってほしいところなのですが、何とかラストイヤーで活動の意義や精神も受け継いでもらえるように語っておかねばなりません。折角開いた新たな扉を閉ざしてしまってはモッタイナイ、モッタイナイ。

 

 

20110317 福祉でない福祉ビジネス③県内の福祉事業所と民間団体や企業、行政、個人の方々が参加されていらっしゃいます。参加させていただきながら恥ずかしいのですが、まったく予備知識が無く、どういう事が行われるのかまったく分かっていませんでした。まあ、行き当たりばったりは毎度の事なので、なるようになるかと諦観の境地です。参加した福祉事業所と企業がそれぞれにブース出展をさせていただけたので、『どうぞのいす』の現物や絵本、弊社の商品なども展示させていただきました。こういう時に愛媛木青用の簡単なチラシでもあればいいのですが、不足を言っても仕方ありませんので言葉でお伝えするばかりです。ありがたい事に弊社のブースにもたくさんの方がお越しいただき名刺交換させていただきました。どこで知っていただいていたのか、弊社の事を「知っています」とお声を掛けていただけたのは嬉しい事です。

 

20110317 福祉でない福祉ビジネス④さて、メインの講演は『誰もが損をしない福祉の構造』と銘打ち、講師は広島県にて料亭『久里川』の支配人の傍ら、ボランティア・コーディネーターとして活躍されている森浩昭氏。会の冒頭から「福祉」の言葉が飛び交い、あまり難しい話は・・・と思っていたら、これが何とも分かりやすい明快なお話でした!要するに企業と手を組んでビジネスに加わろうと思うならば、「授産所だから」という甘えを捨てて、意味のある仕事をして「魅力ある商品」を堂々と買ってもらいなさいという事。シンプルです!

 

20110317 福祉でない福祉ビジネス⑤森社長の言葉に説得力があるのは、誰もが損をしない(同情やボランティアではない)企業と事業所とのコラボを実践されているからです。ご自分の料亭で使われたかまぼこ板を使って、広島のプロバレーボールチーム・JTサンダースの選手の似顔絵入りの人形を事業所に作らせ、人気を博している事例などまさにウイン&ウインの構造です。そこで重要になるのがお互いをつなげるコーディネーターの育成であると仰っていましたが、それこそが最大の課題。どの分野でも人づくりがポイントです。

 

20110317 福祉でない福祉ビジネス⑥文面で読むと厳しくドライな話のように思えるかもしれませんが、実践した人にしか語れない言葉の重みと深い理解があります。「これはボランティアではない。趣味だよ。」とサラリと言える潔さ!凄い人がいるものです。講演後にお話させていただきましたが、「福祉」を冠に掲げないアドバンテージの無いビジネスこそが目指すべき道であり、目的を達成できる唯一の手段であという点で合致しました。「福祉」の異業種なればこそ見えるものはあります。ここにもまだまだ『森の出口』はありそうです。




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