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沖縄の旧首里城守礼門の修復工事で求められた『イヌマキ』ですが、生憎沖縄では手配できず鹿児島や宮崎などの九州各地の県から供給してもらい事無きを得たそうです。琉球王国時代は、イヌマキを計画的に植林して定期的な修復用に備えていたらしいのですが、その後植林事業が継続されず今回の事態となったようで、復元作業を契機に4000本の苗木を植えて、50年か100年先の修復の対応しようという試みがされているそうです。イヌマキに限らずこの手の話は多々あります。
始めてイヌマキの材を買ったのは20数年も前の事ですが、その頃はイヌマキに対する知識も関心も薄くて、それこそ『コウヤマキのまがいもの』なんてぐらいにしか考えていませんでした。なので、欲しくて買ったというよりは欲しいものとセットになっていたので仕方なく買ったという感じだったのですが、今にして思えばもっと買っておくんだったと強く後悔。そういう経験があるので、今は一期一会の出会いを大切にして、気になった木はとりあえず買っておくようにしています。
まあ、そんな事をしているからドンドン在庫が増えていってしまうのですが・・・。しかし、これからも国産材のちょっと珍しい木はますます入手が難しくなってくるのは間違いありません。材そのものが少なくなっているという事もあるでしょうが、それ以上に深刻なのはそういうレアな木を取り扱う業者の数が激減してしまっているという事。以前からお世話になっていた宮崎ルートもほぼ壊滅的となり、マニアックな国産広葉樹の道は絶たれたかと思っていたのですが、捨てる神あれば拾う神あり。
拾う神の話はまた改めてする事としますが、そんな宮崎からかつて仕入れたイヌマキな材が幾つか残っております。大き目の板はほぼ売り切ってしまったので、薄い板や小さな角材が主ですが、イヌマキについては次の供給ルートが見つかるまでは、販売用としてではなく、自社のオリジナル商品のための貴重な原料として保存しておかねばなりません。わずか35㎜角の【森のかけら】といえども、材が無くては話にならず。そんな【森のかけら】ももうすぐ累計で700セットになります!
では実際に分けていただいた『イヌマキ』の丸太を挽いてみます。しっかり乾かせるためにも、手に入った後はなるべく早めに挽いてしまう事は肝心です。住宅の庭に植えていたようなイヌマキですので大きなモノではありません。造園屋さんが長さを1m~1.5m程度にカットしていただいています。直径は尺足らず(約250㎜前後)ですが、【森のかけら】などの小物を作るには充分なサイズです。伐採して2、3日経った状態ですが、小口を見ると白っぽく見えます。
ところが一面削ってみると、水分をたっぷり含んだ瑞々しい表情が現われます。イヌマキに限らず、伐採直後の生しい状態では、乾燥した時のそれからは想像も出来ないほどに濡れ色の別人顔です。水分が多い方が挽きやすいという事もありますが、虫の割れの事なども考えると、なるべく早い時期に挽く必要があります。これぐらいのサイズになると、節の具合や幅を見ながら、【森のかけら】にしようとか、『モザイクボード』にしようかとか、好みに合わせて挽けるのが嬉しいところ。
今回は、『森のりんご』狙いでしたので、普段よりも少し大きめに挽きました。下の画像は、挽いてから風通しのいい日陰で2,3日放置しておいたもの。水分が抜けて表面の淡いオレンジの濡れ色が灰褐色に変化。ただし、まだ完全に乾いているわけではないので、これをまた削り直すと内部はまだ湿っていますが、これぐらい(65×65㎜程度)のサイズであれば、一か月もすればすっかり乾いて内部まで同じような色合いになります。
弊社ではこの角材の他にも、九州は宮崎県産のイヌマキの板材を幾つか在庫しています。愛媛では材としてはほとんど認知度の無い木ですが、九州(特に南部)では馴染みがあるそうで、平成24年~平成25年にかけて行われた旧首里城守礼門の保存修理工事でもイヌマキが使われました。琉球王国時代に建造された首里城には、シロアリにも強くて耐久性の高いイヌマキが沢山使われていたため、今回の修復でもイヌマキを使おうという事になったのですが、沖縄にはそれだけのイヌマキがありませんでした。続く・・・
さて本日も『イヌマキ』の話ですが、名前の命名からは随分と卑下されたものの、材としては非常に有用な木として活用されてきました。高さ20m、直径500㎜ほどになる常緑の針葉樹で、大きなものになると直径が1m近くにまで成長するものもあるらしく、関東以西の太平洋側や四国、九州、沖縄などに広く分布しています。四国にも沢山生えているらしいのですが、木材市場に出てきたのを見たことがありません(広葉樹に関心の薄い愛媛の市場では、十把一絡げに雑木扱いされてしまうので)。
耐湿性が高いだけでなくシロアリに対しても強い抵抗性を発揮する事から、土台や柱などにも利用されるのですが、特にシロアリの多い沖縄では古くからイヌマキが使われ、その歴史は実に100年以上に及ぶとされています。コウヤマキの薬草のような匂いはしないものの、イヌマキにも独特の臭気がありますが、それと含有成分がシロアリに対して強い抵抗性を持っているらしく、土台や柱などの建築材に限らず家具や風呂桶、桶、屋根板、呑口(のみあなを塞ぐ栓)などにも使われます。
また潮風にも強い事から生け垣や庭園木としてもよく植えられていて、鹿児島の知覧の武家屋敷通りの立派なイヌマキ生け垣は有名です。以前に業社会の旅行で訪れた際には、立派で風情のあるイヌマキの生け垣と石垣の光景を目にしたものの、当時はまだイヌマキに対して今ほど関心が高くなく写真も撮らなかった事が今となっては悔やまれます。今回入手出来たイヌマキは一家庭の庭に植えられていたもので、そう大きなものではないためせいぜい【森のかけら】が取れる程度のもの。
それでも板になる前の状態(丸太)で出会えて、そこから順を追って板になるまでの過程を見続けられるという事は、材の特性を知る上でも貴重な経験です。うちは製材所ではないので、基本は板材での仕入れとなるため、元の姿を見る事は稀でした。最近は愛媛の木を原木で買ったり、庭園木をいただく事も増えて、立木や原木の姿を見る機会も増えたのですが、木を語るうえで『はじまりの姿』を知っておくことはとっても重要ですし、その端材まで大切にせねばという思いがますます強まるのです。
★今日のかけら・#017【犬槇/イヌマキ】 マキ科マキ属・針葉樹・宮崎産
以前から、造園屋さんが街路樹などの伐採作業しているのを見ると、あのプラタナス手に入らないかなとか、あのカイヅカイブキ捨ててしまうなんてモッタイナイなんて思っていました。当時は造園屋さんの知り合いがいなくて、指を咥えて見守るしかありませんでした。たぶん声をかければ分けていただく事もできたのでしょうが、こちらとしてもどんな木でもどんなサイズでもいくらでも欲しいというわけでもなくて、必要な木だけが必要な時期に欲しいので、迂闊に声をかけてもどうなのかと・・・
それがこの数年でひょんな事から市内の複数の造園屋さんと次々にご縁が出来て、事前にこちらの要望を伝えている事もあって、「今度、前から欲しがっていたOOの木を伐るけどいる?」なんて痒いところに手が届くようなお話をかけていただく事が増えて大変ありがたいのです。そういう木は、小さく割り返して桟積みして数年間天然乾燥させて、大きさに合わせて【森のかけら】や『モザイクボード』等々に加工していきます。先日も、市内の某所で伐採した木を分けていただいたのですが、
その中に『イヌマキ』がありました。これはありがたい!そもそもイヌとかカラスなどの動物の名前が頭につく木というのは、同属の主たる木に対してそれよりも劣るという意味で、その種を卑しんでつけられたもので、イヌマキもコウヤマキに対して同様に耐水力があったりするもののそれよりもやや劣るとしてイヌという言葉が頭に冠されたものだとされています。ちなみにコウヤマキが自生しない地域では、イヌマキの事をマキと呼ぶ場合、あるいはコウヤマキをホンマキと呼んで区別する事もあります。
植物学者・南方熊楠によれば、耐湿性の高きコウヤマキの別名がホンマキであるため、それよりも劣るが同様に耐湿性もあり、葉の形も似ている事からイヌマキの名がついたとされています。万葉集などで使われる古語のマキは、本来「まことの、優れた」という意味のマ(真)であって、スギやヒノキを指し示していたそうなので、少し話は複雑ですがいずれにしてもイヌマキの評価はその命名の由来から考えても決して高いモノではなかったようです。しかし【森のかけら】においては貴重なワンピース!続く・・・
各月の『誕生木の出口商品』を作ろう!と、意気込んで作り始めたものの、すっかり途中で座礁してしまっています。決して頓挫したわけではないのですが・・・。たまたま商品開発を始めたのが、加工性に優れていて特徴が分かりやすく逸話や伝承なども潤沢にあった9月(ホオ)からだった事もあって、これは12ヶ月の誕生木商品の開発も造作ないと「誤解」してしまいました。その後も10月・クリ、11月・イチョウ、12月・モミと、『出口の分かりやすい、加工のしやすい木』が続きました。
このまま順調に12の出口商品が出来てしまうのか!いやいや、12の誕生木を作った時から、いつかこういう時が来るという事はよ〜く分かっていました。ただ、なるべくその時が来るまで見ないように気づかないようにしていただけ・・・そう、出口商品にとって最大の関門が1月のマツ!まあ、これはあくまでも私にとって問題だという事なのですが。いずれここが最大の難所となり、最大の蹉跌になるという予感はありました。日本人に身近なはずのマツがなぜそんなに難しいのかというと、
それはなによりもマツに含まれる『松ヤニ』が問題!それぞれの出口商品のコンセプトとしては『なるべく身近な場面で使えて、材の特徴と物語を結びつけた奇をてらわないモノ』と考えているので、オブジェというようなものではなくて、日々の暮らしの中で使ってもらえる実用的なモノを作りたいのです。なので当然触れるモノが前提となるのですが、手についてしまうと不快に感じるヤニがその前に大きく立ちはだかるのです。こちらは市内某所で伐採された立派なマツの丸太。
辺材部分(白太)に環状にヤニが滲んでいるのが分かると思います。この状態でこれぐらい滲んでいるという事は、板に挽くとネッチョリとヤニが現われる事間違いなし!このヤニのお陰で材に艶や光沢が生まれるのではあるものの、このねとつきは触るには好ましくないのです。そういう時こそ、『木は五感で楽しめる素材』というキーワードが助け舟となるはずなのですが、それでもなかなか降りてこない・・・。マツ、松、末、待つ・・・嗚呼、今年もまたここで躓いてしまうのか~!!
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