森のかけら | 大五木材


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ラ・コリーナ近江八幡で出会った『気になる木のモノ』は木型以外にもいろいろありましたが、そのひとつが、こちらのロンドンバスをシンボルにバイクなどを展示してあるギフトショップにあります。この建物も面白くて、外見は半円形のガレージで、全体の空間の中に違和感なく溶け込んでいます。中もアメリカの映画に出てきそうなほどオシャレ。神はディテールに宿るといいますが、細部に至るまで計算して作り込まれていて、手を抜かない本物志向が垣間見えます。こういうセンスの無い私からすると羨ましい限り・・・。

そのショップにはさまざまなオリジナル商品が販売されているのですが、商品の企画開発から包装のデザインまですべて自社でされているそうです。先代の頃から包装紙などもご自分でデザインされていたそうで、やはりものづくりには『絵心』は大切な素養のひとつだと思いました。私も子供の頃から絵を描くのは好きでしたが、若い頃のきちんとデザインとかの勉強をしておかなかった事が今でも心残りです。さて、そのガレージショップには2階があって、その階段を上がるとそこには、気になる木のモノがあります。

それがこのウィスキー樽。ウィスキー樽と言えば、京都は伏見の有明産業㈱さんのところの商品です。ポンポンといくつか並べて置いてあったのですが、何も説明が無かったので単にインテリアとして設置されていたのか、イベントでもされる時のテーブルか何かに使われるのか分かりませんが、ただそこに置いてあるだけでも存在感充分!有明産業さんのこの樽はちょっとオシャレな店舗などでは最近よく見かけます。やっぱりこちらも本物。本物はただそこに置いておくだけでも画になります

恐らく『ホワイトオーク』製だと思われます。ホワイトオークにはチロースという成分が含まれいていて、非透水性が高く木樽の中に水を入れても水漏れしません。更に内部から抽出成分が溶け出してまろやかなウィスキーに仕上げてくれます。これが他の木だとうまくいかないようで、やはりウィスキー樽はオークでなければなりません。初めて有明産業さんのこの樽を見た時は、樽に打ち付けられたラベルがいかにも外国風なデザインだったので、てっきり海外から輸入された樽だとばかり思っていました。やっぱりデザインって商品の顔だし、大事。

ちなみに有明産業さんではホワイトオークの他にヨーロピアンオーク、コモンオーク、国産のミズナラ(水楢)の木を樽の素材として使われているそうです。更に他の地域のオークや、オーク以外の木(スギ、ヒノキ、メープル、クルミなど)も樽の一部に使用されたりしているみたいで、『森の出口』作りにもご熱心!この樽に特別な意味はないのかもしれませんが、旅先で木のモノに出会うだけで、旧友に会ったようなような気分になってしまいます。すっかり木のモノを探す習慣が身についてしまって・・・




その道の方には有名な話のようですが、ラ・コリーナ近江八幡を運営する『たねやグループ』さんのご先祖は材木商だったそうです。初代は近江八幡で江戸時代頃に材木商をされていて、かなり儲けられたらしいのですが、儲かりすぎて遊びほうけて全財産を失くしてしまい、そこで鞍替えして穀物や根菜類の種子をうる仕事を始まられました。その後、明治になって菓子屋に転じられて今の仕事の基礎が固まったと、山本昌仁社長の著書に書かれていました。私は著書を読んで初めて知りましたが、まさか先祖が材木商だったとは・・・。

材木商だったからというわけではないのでしょうが、ラ・コリーナではいくつか『木で出来た気になるモノ』がありまして、そのひとつがメインショップの壁面にずらりと飾られた木型。その昔は、砂糖を水に溶いて木型に流し込んで固めた砂糖菓子などを作るのに必要だったもの。私が子供の頃は、『めで鯛』ということで鯛の姿をかたどった和菓子をよく見かけたものです。さすがに今ではほとんど使われる事がなくなったので、装飾として展示されているのだそうですが、これだけズラリと揃うとまるで美術工芸品のよう!

どれもが経年変化で黒ずんでいて、実際に使われていたのだと思いますが、そのデザインは素晴らしくずっと眺めていたいほど。実は今でもたまに京都などから菓子の木型に使いたいのだけど、ヤマザクラの材は無いかという問い合わせが入ることがあります。なかなか取引にまで至る事は少ないのですが(今どきですからあちこちから相見積もりを取られているのだと思います)、今でもそういう需要もあって、やはりそこで使われているのは摩耗性が高く滑らかで彫りにも適したヤマザクラ(山』のようです。

私は実際に木型を使って菓子を作った事もありませんので、ヤマザクラがどれぐらいこういう適性があるのか本当のところは分かりませんが、昔から木型と言えば桜と言われているぐらいですから、先人たちが長い経験の中で桜がもっとも適性があると見出したんだと思います。ここに展示してある木型が何の木なのか、近づいてみたのですがサクラっぽくも見えるのですが、全部が全部そうなのかは判断できませんでした。昔であればもしかしたら入手しやすい里山の広葉樹あたりを使われたのかもしれません。

海外では美術品としても人気があるということですが、日本人にだってこういうものに目が無い好事家は多いと思います。木型に限らず昔の職人さんが使っていた道具って、実に緻密で精巧に出来ていて、その割に構造がシンプルで修理しやすくなったりと驚くほど機能的だったりします。特に木の道具って時間が経てば経つほどに味わいや趣きが生まれて来て、いい感じになってきます。これが貼りものだったらこういう味わいは出ていないでしょう。やっぱり本物って時間が経ってもしっかり残ります。




ラ・コリーナのメインショップを抜けると広大な敷地が広がっています。そこにはかつて、全国各地で負の遺産と化してしまって悪名高い厚生年金休暇センターがあったそうですが、その広さなんと甲子園球場3個分!およそ35,000坪の敷地の多くは、池であり、畑であり、森であり、申し訳程度にちょこんんといくつか建物が建っています。要するに、何にもないのです。前日に行ってげんなりした『三井アウトレットパーク滋賀竜王』とはまるで対照的な光景がそこには広がっていたのです。そのスケールに呆気に取られていたのはわが家ぐらいで、リピーターが多いようでした。

このラ・コリーナ近江八幡は、たねやグループのフラッグシップ店として2015年にオープン(山本昌仁社長の著書を読んで知りましたが、この土地を買われてから、店が出来るまでの経緯も驚きです)して、来訪者が年々増えていき、2017年には訪問者数が年間で285万人になったとか!1つの施設に285万ってとんでもない数字です。現在では滋賀県一の観光スポットになっているそうです。ちなみに愛媛で一番観光客が多いのが松山城ロープウェイ(約132万人)、道後温泉本館・別館(約111万人)ですから圧倒的な差です、愕然。

勿論お目当ては名物のバームクーヘンでしょうが、それだけではなく、目当ての買い物をされたお客さんたちは、何もないただっぴろい敷地へと流れ出ていきます。大きな池の周囲と中央には田んぼのあぜ道のような道があるのですが、それぞれがめいめいにそのあたりを散策しています。さあ次の店、さあ次の店と急かされながら、人混みをかき分けて店を巡るアウトレットショップとはまったくの別世界で、時間の流れもゆったりとしています。有名ブランドもアトラクションも何にも無い場所に、そこにしかないものを求めて300万もの人が押し寄せて来るという現実・・・。

敷地の中にはいくつかのショップはあって、そこはそこで賑わってはいるものの、ブランドショップのようにそこだけに群がって、買い物さえ終わればそそくさと引き上げるような感じではなく、何度のこの場所にやって来て、それぞれがこの場所でのそれぞれの楽しみ方、遊び方を見つけていて、のんびりとそれを体感しているように感じました。その時にはこの場所の意味や正体がよく分からず、頭の中は「?」だらけでしたが、帰ってから山本社長の著書でその意図やコンセプトがよく分かりました。同じような事を考えてる人は多いですが、実践出来ているという事が凄い!

その時に直感的に感じたのは、家内が目指している方向はこっちだろうなという事と、私自身もこれからの材木屋として生きる道はこっちだと感じました。漠然としたイメージはあったものの、ここまで具体的なモノを見せられると、もう何の反論もありません。勿論、お菓子屋と材木屋という事で、ジャンルは違いますが、ただモノを売るのではなく、その向こうにある『生き方を示して、ここにしかないものでひとを楽しませる』という大テーマを実現させるために進むべき道は同じ。規模はあまりに違い過ぎますが、その考え方は共感することばかり。

裏の敷地に砦を建てたものの、その使い道を考えあぐねていましたが、そもそも発想が違っていました。いかにそこを利用してモノを売るかとか、何のイベントに使えるのかとかばかり考えていましたが、それは大きな間違いであると脳天を殴られたような気分。だからといってすぐに行動に移せるわけではなく、いろいろと準備運動やら考え方もまとめていかねばなりませんが、進むべき道はより明確になりました。偏屈材木屋でいい、そんな材木屋にしか出来る事、モノがある。心の底のほうがちょっと熱くなってきました

 




バーククーヘンから木の話に戻ります。ラ・コリーナ近江八幡さんの事をスマホで検索していたら設計者が、緑や自然を大胆に取り入れた遊び心溢れるデザインで有名な藤森照信さんと知って納得。宮崎駿のアニメの世界を具現化したようななんとも言えない温かみのある空間が素晴らしい~。もっとも菓子に関係の深い木がクリ(栗)という事なので、クリの木をたっぷり使おうという事になって、至る所にクリの木を使われたそうです。そう知って改めて店内を見渡せばここにもそこにもクリ、クリ、クリ・・・。

たねやの代表にしてこのラ・コリーナを作られた山本昌仁社長はじめ、たねやのスタッフ、藤森さんたちが、直接岐阜と長野の県境の付近の山にまで入って、クリの木を選ばれたそうです。その数なんと1,000本を超えたとか!クリの木と人間の関わりは深くて、古くは青森県の三内丸山遺跡から直径1mものクリの巨木を使った大型掘立柱建物跡が発見され、縄文時代からクリを用材として利用してきたことが証明されています。当時から食用としても貴重でしたが、お菓子の素材としても欠かせません。

線路の枕木に使われるほどタフでありながら、見た目の印象はナラほど強くなく、素朴な雰囲気が漂っていて不思議な親しみを感じる木です。愛媛県は実は地味に栗の生産量は全国2位なのですが(1位は圧倒的な大差で茨城県)、素材として県外へ出荷している量が多い事もあって、地元でもあまりその事を知らない人も多いほど。なので栗の木は沢山あるにはあるのですが、あくまでも食用の栗を育てるためのもので、建築などの用材にするような大木とはそもそも目的も違います。なので栗の木というと、食べるための栗を宿した小さな低木のイメージしかありません。

初めて『栗王国・岩手』で巨大なクリの丸太を見た時はビックリしたものです。建築や家具に使うとなるとやはりある程度の大きさと素性の良さが求められるため、小さな丸太や曲がった木には目がいかなくなりがちです。ところがラ・コリーナに使われているのは、豪快に曲がったり、ねじれたり、節で凸凹していたり、癖が強いような木が、森であった姿形のまま当たり前のように使われています。通常不適とされるこれらの木が立派に、いやそういう木だからこそ相応しい場所で光り輝いている。目から鱗が落ちる思い。

その日は満席で入れませんでしたが、カステラショップ『栗百本』では、曲がりくねった木がこれでもかと使われていて、クリの木の魅力を改めて教えていただきました。今は奇異に見えても本物を使う、本物であれば時間とともに風味を増すという藤森哲学が徹底されています。今までにもクリの木はいろいろなところに沢山使ってきましたが、自分が見ていたのは、スーパーに切り身として並べられた刺身のような、調理されたクリの上っ面だけだったなあと思い知らされました。深い感動と強い反省を噛みしめながら更に中庭へと進んでいきます。まだまだ続く・・・




娘たちの勧めで、評判のバームクーヘンをいただきました。ふわふわでやわらでしっとりしていて甘さ控えめで、噂にたがわぬ美味!お店で買うバームクーヘンってもっと硬いのですが、焼き立てはこんなにやわらかいのかと驚きました。ラ・コリーナ近江八幡では、間近で職人さんがバームクーヘンを製造している工程を見る事が出来ます。売店の傍のガラス張りのスペースで作業されていますが、(余計な心配でしょうが)大勢のお客さんの好奇の目に晒されて中で作業するスタッフの方、かなりストレスが溜まりそう・・・

ところで、材木屋として気になるのはバームクーヘンの味そのものよりも、その語源や木との関わりについて。まずバームクーヘンという名前がドイツ語Baumkuchen/樹のお菓子)で、見た目が木の年輪に見える事からその名が付いたぐらいの知識しかありませんでした。専門店で買うバームクーヘンは綺麗で均質な層が出来上がっていて文字通り『年輪のケーキ』のように見えますが、自分で作るとなると超難しくて、昔、愛媛大学の樹木博士の講義で手作りバームクーヘンの体験をしましたが、もの凄いいびつな層でとても健全な樹の年輪には見えないモノになりました。

発祥の地がドイツという事ですが、ドイツの木といえば思い浮かぶのが、『黒い森』。ドイツ語だとシュヴァルツヴァルト(Schwarzwald。植林されたモミ(樅)など針葉樹林が密生して生い茂り、夏でも暗く、遠くから見ると黒く見える事からその名がつきました。実際に行ったことはないのですが、その黒い森から産出されたドイツモミを使った事があったので、ドイツ、樹、といえば「黒い森」が連想されます。それでいろいろドイツとバームクーヘンの事について調べていたら、日本で初めてバームクーヘンを作って売り出された老舗の㈱ユーハイムさんのHPで気になる話を見つけました。

それはバームクーヘンの名前の由来についてですが、定説とされている前述の由来のほかにもうひとつこういう説もあるというご紹介。それはバームクーヘンを焼くときに使う芯棒に木の棒を使ったいたからではないかというもの。古来からドイツではカシ(樫)は特別な木で、「堅牢さ、強さのシンボル」であり、ドイツの森のシンボルでもあったというもの。という事は、そもそもカシの木の芯棒を使ったいたことから、木で作るお菓子としてバームクーヘンという名前になったのではという説。そこで気になるのは、その説が正しいかどうかよりも、芯棒の木がカシなのかどうか?

英語が日本に伝わった時に、オーク(Oak)を誤ってナラ(楢)ではなくてカシ(樫)と訳してしまったために、その後いろいろな文献でナラとカシの取り間違いが起きてしまっているのは有名な話。そもそも英語のOakという単語には、常緑性のカシと、落葉性のナラの区別も無く、ヨーロッパの人もその区別にはこだわらないとか、アルプス以北のOakは落葉性のナラであるなどの話もあって、ヨーロッパに行った事が無い私には正直よく分からないのですが・・・置いてあった芯棒も焦げていて何の木かよく分かりませんでしたが、こういう『美味しい木の出口』もいいなあ♪




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